「たまにだけどさ、今日は仕事行きたくないなーなんて思う日、あるじゃない?」


そう私に問いかける彼は、前置きもなく私をベッドに押し倒し、私の両腕を軽々己の左手のみで拘束している。
口調も、その瞳も普段と変わらぬゆるさを保持しているが、私を抑える左手は、もがこうとしてもピクリとも動かない。


カカシの突然の行動に戸惑いしかなく、私は
「え、ああ、うん。あるけど、え?なに?」
などと呆けた返事しか返せないでいる。


そんな私を見つめ続けるカカシは、こちらから見えている右目を細めた。額当てで隠れた真っ赤な左目も同様のことだろう。さらに、顔の下半分ほどを隠すマスクの下で、形のいい唇の輪郭が弓を描く様も見受けられた。


「仕事なんて放っておいて昼間っからセックスしたいとかさ」


微笑んだまま投げられた言葉に、私はとうとう目を点にする。


「だからさ、何も心配することなく名前とこうしてイチャイチャしたいわけ」

そう言うとカカシは右手で私の頬を撫で左のまぶたに唇を落とした。マスク越しに触れる感触にくすぐったさを覚え身を捩る。


「どうしたの?何かあった?」

私の放った質問には応えず、額や頬、髪などにどんどん触れる範囲が広がっていく。

抵抗することは無いと踏まれたのか、知らない間に両手の拘束は外されていた。



「いつもなら仕事前はバタバタしてゆっくりできないけどさ、今日ってば休みでしょ?朝起きて、名前が隣にいて、しばらく二人でぼんやりして。腹減ったって言ったら名前が飯作ってくれて、手を合わせて食べた。今日もうまかったよ。

毎日こうしてぼけっと過ごしたいなとも思うけど、俺にも名前にも仕事があって。それは決して逃れることはできなくて。別にこの仕事が嫌いとかそんなわけでもない。まあ、考えることはたくさんあるけど自分の生き方に後悔なんてしてられないし、してもない。俺は立ち止まることなんて許されてないから」



先ほどまで携えていた微笑みは鳴りを潜め、少し目を伏せるカカシの長いまつげを眺める。


また目が合ったと思えば、真っ直ぐすぎる瞳から目がそらせない。



「普段なら、仕事を放棄してさ、明るいうちからこんなことできないでしょ。ほら俺ってば、かの有名なはたけ上忍だからさ。でも俺も心を持った人間だから、たまにくらいこういうのも許されるでしょ」

最後の一文を言いながらカカシの左の口角が上がるのが分かった。




「そして今日は、運のいいことに俺たち二人とも仕事がない」


俺が言いたいこと、分かるよね?と、口元のマスクをずらしながら近づいてきた形の良い唇に、私は目を閉じてそれを受け入れるしかなかった。


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