「今日ね、抜き打ちで英語の単語テストがあったんだよね」



そう話し出した名前の眉は下がっている。
きっと結果は思わしくなかったのだろう。



「大体さ、抜き打ちじゃなくても点数悪いのに、いい点取れるわけないじゃん。点数半分なかったからペナルティでプリント出されたし」


そういえばこいつ、英語苦手だったよな。
得意なのは数学だっけ。




「英語の単語なんてのはな、コツコツ覚えていくもんなんだよ。毎日勉強しろよ、毎日」

「なにそれ地味すぎるよ健太郎」

「うっせえ」

地味とはなんだ、地味とは。実に堅実な方法じゃないか。
俺は手元の部誌に目線を落とす。
さて、今日の練習内容と反省点をだな…。







「分かってるけどさ、単語多すぎるし、つづりもわけわかんないし、まず読めない」

数学の方が公式に当てはめるだけだから好きだよー、なんて。
頭は悪くないのにな、こいつ。




名前は例の単語テストのペナルティであるプリントとにらみ合っている。
…半分以下って何点だったんだろうか。



うーん、とか、アールだっけエルだっけ?とか言っている名前を眺めてみる。


あれ?なんか、これ…。







気付けば俺はプリントに目を向けている名前のあごを持ち上げ、唇に自分のソレを重ねていた。


「え?」


「え?ん?あれっ?」




いきなりの行動に驚いたのは名前だけではない。
何を隠そう、自分でも驚いている。



突然の行動に、俺たちは顔を赤くさせて、あ、とか、いや、とか口ごもっている。






「なんか…、なんか名前のこと見てたらさ、その、幸せだなって、それで、したくなった…」

語尾が弱くなってしまった。俺、かっこわりい…。





でも名前は
「あ、私もこうして健太郎と一緒にいれるの幸せだよ」
って恥ずかしそうに笑ってくれたんだ。








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