「ひかるー しんじゃうー」


「ど、どないしたんや姉ちゃん!!」


「うー金ちゃーん」




なんやねん。名前と遠山がなんか騒ぎ始めた。
ここは部室やぞ、静かにせえや。




「あかん!光!姉ちゃんが死んでまう!」


「ひかる!名前!しんじゃう!」



名前の手首を掴んでいる遠山が、焦った声色で俺を呼ぶ。

ちなみに名前は「ひかるぅ、ひかるぅ」なんて言っている。黙れって。



「2人ともうっさいわ。どないしたねん」

めんどいけど相手してやらんと、よりうるさくなることは経験済みや。



「血や!姉ちゃんの指から血が出てん!」


「部誌で指切ってしもたー」



なるほど。どうでもいい。



俺はもう一度自分の携帯に意識を戻す。


「え?ひかる?彼女が指から血流してんねんで?ひかる?」


「光!ええんか!姉ちゃんが死んでしもうてもええんか!」



なんやねんこいつら大袈裟すぎる。
ノートで指切ったくらいで死んだやつなんて見たことない。
だいたい血は流れてない。ちょっと滲んでも、ない。


俺が無視を決め込んだのが分かったのか、2人はより騒ぎ出す。



「うわーん、ひかるが彼女のこと見捨てたー」


「姉ちゃん、大丈夫やで!わいが助けてみせるからな!」


「金ちゃん頼もしいよーうわーんひかるよりもかっこいいよー」



なんやねんこいつら。
それに名前は、切った指よりも遠山が握っている手首の方が痛そうなんやけど。










一通り、騒ぎきった2人。





「はいはい、そこまでや」


「なんやねんひかる。私を見捨てたくせに!」


「そうやで!わいが姉ちゃんを助けたったんやで!」


俺は自分の荷物と名前の荷物を手に取った。


「分かった分かった。分かったから遠山はその手をはよ離さんかい」



素直に名前から手を離す遠山。


「金ちゃんおおきにな。金ちゃんのおかげで生き返ったで!」


「おん!」


得意気な遠山と阿呆の名前。



「はよ帰るで、名前」


「金ちゃんまた明日な!」


「明日な!光もな!」





















帰り道。名前の手を見れば、不格好に巻かれた絆創膏。


「どないしたらそんなにぐしゃぐしゃに貼れんねん」


「ん?これか?金ちゃんが一生懸命貼ってくれてん」

かわいいやろ?って、なにがや。




「これな、地味に痛いねんで?せやのにひかる無視した!」


「はいはい悪かった悪かった」


適当な相槌を打つ。まだ名前はうだうだ言っている。





「そうや、」


「ん?なんやひかる」


「お前が死ぬのは嫌や」


「は?」


「やから、お前が死ぬんは嫌やって言うたんや」


「いや、聞こえてるし」


「遠山が言うたやろ、名前が死んでもええんかって」


「うん、言うたけど…」



そう口ごもってから、名前はニヤニヤしだした。


「なんやねんひかる、ウチのこと好きなんやな」


あーあ、いらんこと言ってしもうた。
自分の顔に熱が集まってくるのが嫌でも分かる。



「そっかそっかー。ひかるが寂しがるんやったら一緒に居てあげてもええで」


ひかるもかわええとこあるんやなとか、うっさいわボケ。











「なんやねん、好きやボケ。あかんのかボケ。一生俺の横におれやボケ。」


次に頬を赤く染めるのは名前の方だった。






そう簡単に俺を言い負かせると思うなよ。










「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -