夏休みも始まってだいぶ経つ。

部活も夏休み前の大会ですべて終わってしまった。

あーあ、私の中学2年とちょっとの努力。

まあ、そこそこは頑張れたからよしとしようか、なんて。

さて、感傷に浸るのもいいが、アイスが食べたい。

初めに言ったように、只今夏休みまっただ中だ。

アイスだって食べたくなるよ。人間だもの。

そうと決めたら私は近所のコンビニへ自転車を走らせた。

 


「あ、白石やん」

冷房のよく効いたコンビニにはクラスメイトの白石蔵ノ介。

「なんや、名字かいな。どしたん?こんな暑いのに」

「暑いからわざわざチャリ走らせてアイス買いに来たんや」

「そうかいな」

 
会話終了。

ま、同じクラスとはいえ、白石と私はそんな関係っちゅう話や。

私は白石のいるドリンク類が置かれた棚の横にある、目的のアイスのコーナーへと視線を移す。


やっぱり夏はフルーツ系か、ソーダ的なやつか。
あ、ガリガリ君の梨味って、めっちゃアリやねんな。
え?うまくない?ナシやのにアリやねんで?








…暑いと頭も回らんなるということが今わかった。




私は結局ガリガリ君のソーダ味に落ち着いた。
ちょっとお菓子のコーナーなんかもチラ見しながらレジへと持っていく。




「これも、一緒でお願いします」

レジへ愛しのガリガリ君を置いたときだった。

私のじゃない声とともにレジに置かれたスポーツドリンク。

 

「どしたん白石?一緒て、おごったりせえへんで?」

「わかっとる、俺のおごりや」

「なんや自分太っ腹やな」

「気にせんでええよ、ガリガリ君ぐらい」


なんや白石、いつもより男前に見えるわ。

あ、前から顔は男前か。



―ありがとうございましたぁ―


間延びしたレジのバイトのお兄さんの声を背に、二人でドアをくぐる。

待ち受けていたのはうだるような暑さだった。



「ほんまにあっついな」

「名字、アイス溶けてまうで」

「あ、そうやった。ていうかほんまおおきにな」

「ガリガリ君て、たった60円やないか」

「白石、お金は大切にしいや」

「はいはいわかっとるよ」

 


適当に返事をしながら白石はスポーツドリンクのキャップを開けていた。

私も溶けないうちにと、ガリガリ君にかぶりつく。




「あ、そうや名字、お礼してや、お礼」

「は?なんやさっきはたった60円とか言よったのに、裏切られた感じやわ」

さっきまでイケメンとか思ってたのにね。さっきまで。

「名字、声出てるで」

「あ、ごめんごめん。で?お礼に何をなさいましょうか、白石さん」

「そんなかしこまらんでもええ、話、聞いてくれるか?」

「話?そんなことならお安いご用やで」

白石は苦笑しながら話しだした。



「あんな、俺、こないだな、最後の大会やったんや」

「ん?ああ、テニス部ね、お疲れ様。」


そういえば終業式のときに全国大会出場の部活は紹介されよったなーなんて思いだした。




「おん、おおきに。でな、俺ら準決で負けてん」

「準決って4位?3位?やんな?え、むっちゃすごいやん。
 というか準決で負けた、なんて言い方したらいかんよ。
 準決まで勝ったんや、って言わなね」

 
そうかー、全国大会かー。私の部活なんか、全国出場なんて考えてなかったなー。
あ、ガリガリ君溶ける。






「、そうやな。むっちゃすごいよな、俺ら」

「なんやねん、結局はただの自慢かいな」

「違うよ。本当はな、負けたのやっぱり悔しかってん。
 それをな、名字に聞いてもらお思っとったけど、やっぱりええわ。
 なんかスッキリしたわ」


「なに勝手にスッキリしとんねん」

「こっちの話や。あーあ、やっぱり俺らテニス部はすごいんやんな」

「はいはい、すごいすごい。勝手に言うとき」

「名字、おおきにな」



何がおもろいんかわからんかったけど白石がすごい笑顔やったから
私も一緒に笑っといた。






今日も暑い暑い。









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