「なんか一気に寒くなってきたねー」


場所は氷帝学園生徒会室。
そして本日、10月4日である。


「名前てめぇ、そんなこと言いにここに来たのかよ」


てめぇ、なんてきったなーい言葉を吐いてるのは氷帝のキング、跡部景吾サマ。

「ニヤニヤが隠し切れてないよ、景吾。誕生日おめでと」


彼はふっ、と笑って生徒会の仕事である書類整理に取り掛かる。


「うるせえ。大体プレゼント無しで乗り込んでくるとはいい度胸じゃねえの」


「家帰ったらバースデーパーティーするでしょ。その時に渡してあげる」

楽しみにしててね、なんて言いながら私の目線は窓の外側。
放課後の裏庭は、少し薄暗い。

最近ホントいきなり寒くなってきた。
ついこの間まで暑い熱いって騒いでたと思ったのに。

衣替えのおかげで見えなくなった両腕をさすりながら、座っている景吾に近づく。


景吾は書類に判子を押している。



「ねえ景吾」

「なんだ?」

「ついこの間までさ、暑いって言ってたよね。でも今日は寒いよ。
それにさ、ほんのちょっと前まで景吾はテニスで汗かいてた。キラキラしてた。
それで誕生日迎えてさ、また大人に近づいた。
裏庭はさ、金木犀のにおいでいっぱいになって、もうそんな時期かーなんて思った。
私だってさ、ついこないだ切ったと思ってた髪が伸びてきてるんだよ」


「…何が言いたい名前」


「なんかね、一気に色んなことが変わりすぎてさ、ちょっとさみしいっていうか、怖いっていうか。なんかそんな気分になってきちゃった」


秋ってやっぱり、ちょっとノスタルジーに陥りやすいのかな、なんてね。



「おい名前」


「ん?」


「変化は怖いか?」


「まあ、ちょっとはね」


「そうか」


「うん」



「でもな、お前がずっと、俺様のそばにいることは変わらねえ事実だろ。
それ一つだけでも変化しねえことがあれば十分だろうがよ」


「…気障だね、景吾さん」


「ああん?文句でもあんのか」


「滅相もございません」


私はクスッと笑って椅子に座っている景吾に飛びついた。


邪魔だ、なんて言ってるのは聞こえませんよ、景吾さん。












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