「あれ、あそこに見える浮かれたモジャモジャはキミたちの後輩くんではないですか?丸井さんに仁王さん」
「何を言っとるんじゃ名字。それを言うならお前さんの彼氏じゃろ、アレ」
「あいつ誕生日だもんな。ってか俺にもその菓子を分けろぃ」
そう、私たちのクラスに来て誕生日プレゼントをわんさかもらっているのはテニス部2年でこいつらの後輩であり、私の彼氏でもある切原赤也。
なんだなんだあいつは、わざわざ私たちのクラスメイトにプレゼントをたかりにきたのか。
「なんじゃ名字、お前さんもかわいいとこあるんじゃのぅ」
「は、何が」
「やきもち、じゃろ?視線が赤也に突き刺さっとる。女の嫉妬は怖いのう」
いやいや、そんなことないから。どれだけ赤也がかわいい子たちに囲まれていようと、どんなに赤也がうれしそうだろうと、丸井にプレゼントを奪われて悲しそうにしてようと、女の子にかわいいなんて言われて浮かれてる赤也を見ようと、見ようと、
「嫉妬するに決まってるやないかーい」
「おうおうどうした名字。やべえよ仁王、名字やべえよ」
赤也のもとから戻ってきた丸井の腕の中には、赤也に渡されるはずだったお菓子たち。
「ブンちゃん、よく見ときんしゃい、これが女の嫉妬にまみれた鋭い視線じゃよ」
「うるさいよ仁王」
だいたい赤也は何しに来たんだ。本当に。
「ねえねえ仁王、なんであのバカは初めに私のとこ来ないのー?」
「知らんぜよ」
ああもう何かダメ。せっかく私だって赤也にプレゼント買ってきたのに。
お昼に一緒にご飯食べるときに渡そうと思ってるのに。
ばかー。モジャモジャのばか。
そして私の足は浮かれた年下彼氏さんのもとへ向かう。
「ねえ赤也」
突然割って入った私にみんなの視線が集まる。
「ねえ赤也、赤也はなんのために生まれてきたか分かる?それはね、私を愛するために生まれてきたんだよ」
私は赤也の手を引いて教室を出た。