…このままじゃ、いけねえのかな、





「赤也、帰るよー」

「あっ、ちょっと待って、今日日直なんすよ」



ごめんごめん、忘れてた、なんて笑っているのは名前先輩。


部活が休みの日には、こうして教室に俺を迎えに来てくれる。

時々だけど、朝も一緒に登校する。
朝会う度に名前先輩は
「おはよ、赤也。今日も早いね。朝練がんば」って。
先輩は朝練ないけど、いつも早く学校に行ってるらしい。
静かな教室で読書をするのが好きなんだと言っていた。

お昼になれば一緒に弁当を食べる。
それは、誰もいない中庭で2人きりだったり、部活の先輩と大勢だったり色々だ。



しかしこの人は彼女ではない。かといってマネージャーでもなければテニス部でもない。

なにがきっかけだったかは忘れたが、いつでも俺の隣にいてくれる、大切な人。





早急に黒板を消して、粉まみれになりながら黒板消しを叩いて、日誌はもう一人の日直に頼んでおいた。

名前先輩を待たせるなんて、あんまりしたくない。






「今日はどこ行く?」

ゲーセンもいいし、カラオケもいいし…、ファミレス行ってパフェでもいいよ。なんてのんきに笑っている名前先輩。



「赤也?どっか行きたいところでもあった?わざわざメールまでくれたし。言わなくたってブン太がはしゃいでたから分かるよ、部活が休みのことくらい」



そう、名前先輩は、丸井先輩や仁王先輩と同じクラス。
だから今日が休みだって言わなくても俺を迎えに来てくれたと思う。


でも、俺は昨日のうちに名前先輩にメールしたんだ。

”明日、部活休みなんで”って。



「あの、名前先輩、今日は、あの、」

ああもう俺、昨日から、いやずっと前から考えてたことなのに。


「なに?赤也」

先輩は俺が言うまで待っててくれる。


「あの、今日は俺ん家来ませんか?」

よし、言え、た。


「え?赤也の家?」


「っす」


「いいの?」


「いいんです!名前先輩のために掃除したんすから!」


そう、俺はこの日のために(結構前から)掃除をしていた。
きっと柳生先輩や副部長が見たら感動してくれるほどのきれいさだ。



「赤也の家かー。初めてだね、行ってみたい!」


「じゃあ決まりっすね」




これは、第一関門突破って感じ?






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