純粋を頬張る




「ねぇ、銀時。今なにしてるの?」

大学を卒業して歌舞伎町あたりで高杉とたむろしていた頃、花夜からの電話に懐かしくなって久しぶりに会おうか、なんて。
高校生の時、付き合ってた。所謂元カノ。
喫茶店に現れた花夜はスーツなんか着ちゃって、一人前の顔をしていた。

「いやァ、なんつーか。強いて言えばヒモ?」

花夜の真っ直ぐな眼に、自分の半端さが恥ずかしくなった。

「ふうん。ヒモ、ね」
「今はヒモですらねェけど、さ」
「料理とか作るの?」
「ん、まァな」

女に捨てられて高杉の部屋に居候なんて、いくら俺でも体裁が悪い。

「羨ましいな。わたし、家事嫌いだから」
「うん?」
「銀時がしてくれたら助かるな」
「はい?」
「上司にね、お見合い薦められてるのよ。冗談半分で聞き流してたんだけど、本当に段取りするらしくて」
「えーと」
「ねぇ、銀時」
「おう」
「あなた、わたしのお嫁さんにならない?稼ぎは任せて。その辺の男よりよっぽど貰ってるわ」

花夜ってやつはすました顔して、俺なんかよりずっと過激で。ぶっ飛んでて。
そこらの男より男らしくて、豪胆で決断力のある女だった。

「お嫁さん…」
「だって利害は一致してるわ。それにわたしは今だって、あなたの事が好きだもの」

そういえば、別れたのは受験が理由だった。
勉強している花夜がうざったくて、なんとなく俺から離れてしまった。

「俺だって変わったぞ、あの頃から」
「なんにも変わらないじゃない」
「そんな事ねェよ」
「銀時の眼はね、綺麗なままだもの。きっと大切なところは何も変わってないはずよ」
「成長ねェって事かよ」
「違うわ。わたしが好きな銀時がそのままで、変わらないでいてくれて嬉しいの」

なんとなく離れてしまったけど。
俺だって、花夜を嫌いだと思った事は一度もない。
それどころか、行きずりの女に花夜の面影を重ねて過ごした夜だってあった。

「いきなり結婚って、なァ」
「じゃあ、同棲から始めない?今夜にでも引っ越していらっしゃいよ。どうせ高杉くんのとこに転がり込んでるんでしょう」
「良いのか、それで」
「一緒に暮らしてみて、それから決めても遅くないわ」
「じゃあ、今夜引っ越すよ」
「仕事が終わったら新宿駅の東口で落ち合いましょ。うちまで案内するから」
「ヨロシクオネガイシマス」
「こちらこそ」

花夜は楽しそうに笑っていた。
だからまァいいか、なんて思ったんだ。


そんな、花夜と俺との、二回目のはじまり。
一回目より上手くいく気がした。
その直感はまだ一度も外れていない。













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