『沙羅を孤独にさせない』
と、はるかは言ってくれた。
前世のウラヌスと同じに、最期まで私と共に生きると約束して絡ませた小指が痛む。
私はまた、はるかに重い枷を嵌めてしまった。
愛しているから私から逃げて欲しくて、愛しているから私の枷に嵌まって欲しくて。
なんて、なんて、傲慢な愛なのだろうと失笑している自分が嫌いだ。




「沙羅、沙羅。…クイーン・アポロニア・ムネメ」
「あ、失礼致しました。お母さま」

うっかり太陽神殿に来ていることも忘れるほど、後悔しているなんて。
私は本当に愚かだ。

「そなたがしっかりしなくてどうします。この闘いを見届けるのですよ。両方の眼を見開いておかねばなりません」
「判っております。修行が足りないようです」
「そなたを悩ませているのは、ウラヌスでしょう」
「、お母さま」
「知っていましたよ。そなたの気持ちなど、前世の内から」
「ごめんなさい」
「何を謝ることがあるのです?」
「愛してはいけないひとを愛してしまいました。太陽女神としての自覚が足りない証拠です」
「良いではないですか」
「え…」
「わたくしもそうでしたが、太陽女神は孤独です。その辛さ苦さを理解してくれるパートナーは必要だと思っています」
「では、」
「ウラヌスの覚悟に恥じない太陽女神におなりなさい。わたくしからそなたに言える事はそれだけです」
「はい、精進致します」
「太陽女神だけが幸せになれないのは、考えてみれば異常な事です。そなたとウラヌスは太陽女神に架せられた運命を断ち切る為に存在するのかも知れませんね」
「運命を、断ち切る」
「未来を決める事が出来るのは、今を生きる者だけです。わたくしには成し得なかった事を、そなた達が成し遂げるのです」
「お母さまにも愛した方がおいでになったのですか?」
「ええ。でもその方はわたくしの為に命を落としました。わたくしはその方の為に、己の運命を変える事が出来ませんでした。しかし、そなたとウラヌスの絆の強さなら、或いは…」

クイーン・アポロニア・レトは、静かに微笑んだ。
私の気持ちを見透かしたような、そんな深い色の瞳で。

「前世から惹き合い続けてきた、そなたとウラヌスならば。太陽女神の孤独を打ち消す事が出来るかも知れませんね」
「お母さま…」
「わたくしはそれを望んでいますよ」
「赦されない、恋だと思っていました」
「そうですね。禁忌の恋です」
「でも、お母さまは赦して下さる…」
「赦したのではありません。ただ、期待しています」

クイーン・アポロニア・レトが髪飾りの白い羽根を1枚、引き抜いて私の掌に置いた。

「そなたは、その白い羽根と同じ。まだ無垢の羽根です。どんな色をつけるのか、決めるのはそなたですよ」
「むくの、はね」
「ウラヌスと共にそなたがその羽根をどんな色に彩るのか、期待していますよ」
「、はい」


掌に乗っているふわふわの羽根が、ずしりと重くなった。
そんな、気がする。




不意にはるかに逢いたくなって、私は咄嗟に太陽神殿の大回廊を走り出した。
後悔している場合じゃない。
はるかがしてくれただけの覚悟を、私も返すことこそが真実の愛だと知ったから。






地球へ!
はるかの許へ!






むくのはね




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