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珍しく静雄が家にいる。

いつもはトムと仕事に行くため正臣が訪ねて来ても誰もいないことが多い殺風景な部屋に、今日は1日中静雄がいる。


「あー!!卑怯ですよ、静雄さん!今の赤甲羅じゃないっすか」
「これで紀田最下位だな」
「っ静雄さんひどいですよ!」


くるくると画面上を回転するお姫様の横を赤の帽子をかぶった親父や他のキャラが抜かしていく。
正臣が静雄の家に持ち込んだゲームを静雄の足の間に座ってする。
背中に感じる体温が、心地いい。


「ん、1位」
「静雄さんめちゃくちゃ強くないですか?!ちくしょーもう1回!」
「いいぜ」


優しい表情をする静雄に正臣は顔を赤くするとコントローラーを持っていた手を放し、向かい合わせに身体の向きを変えた。


「静雄さん?」
「なんだ?」
「キスしてください」
「目閉じろ」


腰に回された腕にぎゅっと力が入り、顔の距離が近づいた後、互いに瞼を閉じるのを感じながら唇を重ねた。
重ねるには長いそれが終わると、追うように正臣はまた重ねた。




『紀田、お前もうそろそろ誕生日だろ?』
『あ、はい。そうですけど、トムさん知ってたんですね』
『俺から誕生日プレゼント』
『へ?』
『明日と明後日あいつ休みにしてもらったから』





さらりと大きな手に髪を撫でられる。唇を軽く重ねたまま、身体を押し倒される力の優しさに、正臣はバーテン服を掴んだ。


「紀田」
「っ!んん!」


耳元で囁かれる低く甘さを含んだ声に身体が反応すると髪を撫でていた指が下りて、ピアスを外した。それが合図のように静雄のサングラスに手を伸ばし、ゆっくりと外す。
獰猛な肉食獣のような目と、目が合ってうるさいくらい心臓が騒いだ。


「静雄さん、好きです」
「知ってる。」
「もっと、好きなんです」


首筋を舐められて身体を震わせながら正臣は静雄に言い聞かせるように呟いた。
正臣のパーカーに手が差し込まれた瞬間、ピピピピピと携帯が鳴った。


「ヤベ、」
「……仕事ですか?」
「いや、違う。オイ」
「?」


ぐっと引っ張られると上半身が起き上がり、向き合う体勢になる。サングラスをかけていないおかげで、視線が横にそれたのを見て首を傾げた。






「ありがとな、正臣」






生まれてきてくれて。


目を細めた優しい表情で滅多に呼ばれない名前を呼ばれ、正臣の視界は滲んだ。つ、と落ちるそれは静雄の舌に舐めとられる。


「大事にするから、これからも傍にいろ」
「……しず、お、さん」
「まぁ、手放す気なんてさらさらねぇけどな」


携帯の音は正臣の誕生日を告げるアラームで、不器用な静雄の言う言葉が嬉しすぎて涙が止まらないまま再びベッドに沈んだ。






翌朝、静雄の腕の中で目を覚ました正臣の耳には昨日までなかった新しいピアスが嵌められていた。









不器用に溺れて










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正臣誕生日おめでとう!
初めて静正書きました。
素敵な企画に参加させてもらえて幸せです!
ゆきのこさんありがとうございました!







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