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生徒会寮に着き、事務で敦士の部屋の番号を聞いて、俺は階段を上がる。
202…202、
俺が202を探していると、今まさに部屋を出ようとしている人物に遭遇した。
部屋の番号は202。
その人物は正真正銘、黒田 敦士だった。
「広道…っ」
「敦士っっ!!!」
俺は敦士を確認すると、急いで敦士のもとに駆け寄った。
「一体、学校ば辞めるっちどげんゆうこつなんやっ!?なしてなんも言わんで!?」
「広道…」
「なしてなんやちゃっ!?おれ、やっちオレん気持ち自覚したばいに、これがらなんに、なしてっ!?」
「広道…許してくれっ」
「俺はお前とまだまだ一緒にいたかぁっ!!こん先もずっとずっと一緒にいたかぁっ!!!」
感情任せに次々と言葉を発していく。
「ごめんっ…広道…、ごめんなぁ…」
敦士を見ると、ポロポロと涙を流していた。
たまらずに敦士を抱き寄せる。
抱きしめた敦士の体は以前より細くなっていた。
「ごめんっ…広道っ…ごめん、広道が何度も此処まで会いに来てくれてた事知ってた。毎日、裏庭に来ていた事も話に聞いてた。伝言メモも見た。凄く凄く嬉しかった。俺、広道が好き。大好きだよ。俺だって広道とずっと一緒にいたい。」
「…敦士、」
「…でも、此処にはもう通えない。」
俺は敦士をきつく抱きしめた。
「…あの時された事、…思い出したくないんだ。」
敦士は静かに俺の肩口で泣く。
「親にも奨められて、俺は学校を辞める事を選んだ。だから広道には俺の事…忘れて欲しかった。でないと、広道も俺も辛いから。」
「忘れられるわけねぇやろっ…」
俺はやはりあの時、敦士を守ってやれなかった自分を悔いた。
「…ごめん…広道っ…ごめん、…」
俺の涙はいつまでも枯れない。
今、俺に出来る事は、こうして敦士が学園から去っていく姿を生徒会寮の二階から見つめる事だけ。
俺の可愛い敦士。
もう泣いていない?
俺がいなくても大丈夫?
この先も一人で泣いたりしない?
…誰かと一緒に笑ってる?
君が何処にいても、その花のような笑顔で笑っていますように。
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