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もうすぐ一時間目が始まろうと言う頃。
山田はまだ教室に姿を現さない。
アイツ、遅刻か…?
俺が一時間目の世界史の教科書を用意していると、教室の扉が勢いよく開いた。
「永井っっ!!」
山田が息を切らして教室に入って来る。
「…どうしたんだ?」
山田は凄く焦っている様子で息を切らしている。
「話がある。…廊下に出ろ。」
俺は山田の後に続いて廊下に出る。
「永井、よく聞け。」
「何なんだよ。もうセンコー来るぜっ」
「黒田が…学校を辞める。」
俺は一瞬、山田が何て言っているのか理解できなかった。
…いや、俺の頭が理解を拒否していた。
「今…、何て言った?」
「黒田が今日学校を辞める。しかも勝野によると、もうすぐ学園を出るそうだ。」
嘘だろ…、敦士?
誰か…嘘だと言ってくれ。
「…もう、いかんなんか…?」
俺はその場に膝を着いた。
「…永井、来いっ」
山田が俺を無理やり立たせて引っ張る。
向かった先はAクラスだった。
山田は勢いに任せてAクラスの扉を開ける。
「勝野!!話がある!!」
山田の声にAクラスの生徒が振り返った。勝野は山田の隣にいる俺を見ると、すぐに廊下に出てきてくれた。
「勝野、永井を生徒会寮に入れてやってくれ。」
「…」
「…勝野、永井を生徒会寮に入れないなら、俺はお前を好きになる事は一生ない。」
山田…。
「………分かった。永井君、最後のチャンスだよ。」
「勝野…」
「ほら、永井早く行け!」
「山田っ」
俺は山田を力強く抱きしめる。
「ありがとな」
俺はそれだけ告げると、全速力で生徒会寮へと走った。
今度こそ、
今度こそ、間に合ってみせる。
今度こそ、頼むぞっ
俺はただひたすら走った。
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