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「ごめんって。泣くなよ…仕方ないだろ、もう唐揚げは俺の胃の中なんだから。」
俺が一人慌てふためいていると、獅子崎は首を横に振った。
「お、美味しかった…?」
「え?」
「唐揚げ…美味しかったか?」
「あ、あぁ…マジで旨かった。俺あんな唐揚げ食った事ない。」
俺の言葉に獅子崎は更に涙を零し、俺の鼻血を拭った指で涙を拭っていた。案の定、涙と鼻血が混ざり合い、赤い涙となって恐かった。
「もう、泣くなよ。」
「う、嬉しくて…」
「嬉しくて泣いてるのか?」
「うん」っと、獅子崎は俺に向かって笑った。泣いてるからか不細工な笑顔だったが、何故か俺も笑顔になっていた。
「これ、俺が作った…」
「凄いな、お前。」
「コレも…食べて。」
そう言って、獅子崎は箸で掴んだ蓮根の挟み上げを俺の口元に持っていった。
「いいよ、お前の分が無くなるだろ。」
「いいから。食べて。」
獅子崎が楽しそうに笑ってくれたから、まぁいいか、と思い、箸に摘まれた蓮根の挟み上げにパクついた。
「うんまい。マジで旨い。」
「…これも、美味しいよ」
獅子崎の料理は全部旨くて、結局俺は弁当箱の中身を全部食う結果になった。それでも獅子崎は本当に嬉しそうだった。
◆◇◆
「何だ、あの血塗れのバカップルは。」
「…」
「ん?峰、大丈夫か…?」
「え、あ、いやっ…何でもないよっ!」
「…?」
「鬼島くん、僕、先に教室戻るね。」
「じゃあ、俺も戻るかな。それにしても、糸島って獅子崎と友達だったんだな。」
「…そう、だね。」
微笑ましく二人を見つめる一人と、悲しげに二人を見つめる一人がいた。
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