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「まゆゆにフられろ」
「…殺ス」
猛獣チワワとの掛け合いに思わずクスクスと笑い声が漏れてしまった。この学園に来て、俺は初めて笑ったかもしれない。
「バイバイ」
「…」
「バイバイ」
猛獣が、カッとこちらを睨んできたのが予想外で咄嗟に扉に隠れる。
「…とっと行けよ」
まだ痛いのかチワワは額に脂汗を浮かべながら、顔を苦悶に歪めていた。
「…ごめんね」
「あ?」
「ごめんね」
俺だって、人の子だから罪悪感はあるのだ。
尚も扉から顔を少し覗かせた状態で言葉を投げると、チワワは頭垂れて手をシッシッと振った。
「…わかったから。行けって。」
「…バイバイ」
「はい、さようなら。」
久しぶりに誰かと喋ったから、会話が終わるのが名残惜しかったが、本当に痛そうなので、大人しく帰ることにした。
真っ直ぐに寮へと向かう。クラスにはまだ少し行きづらいから。
寮に向かう最中も。頭の中はあの猛獣チワワのことばかり。やっぱり猛獣は恐いけど、俺の孤独な青春の中の一つの閃光だった。
「…てか、真弓って誰だ?」
チワワの彼女だろうか。あの変態に彼女なんて出来るのか不思議だが…何だか面白くなく感じるのは気のせいだろうか。
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