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「私ね、咲山を好きになりかけてる。」
「…っ」
「可愛いし。私以外に咲山に触れて欲しくないとも思うの。」
「…」
「でも、普通の女性と付き合う方がアンタの為よ。」
「…勝手に決めんなっ」
咲山が更にギュッと抱きしめてくる。
声には怒気が含んでいる。
「俺の好きを勝手に決めんなっ。俺は麹町じゃなきゃ駄目だっ。麹町以外考えられないっ」
「…」
「俺は…その…気持ちいいし、お前は欲望を俺にぶつければいい。」
「…本当に。あんたって馬鹿ね。」
咲山がゆっくりと私から腕を解く。
私は今ちゃんとコイツの前で笑えているかしら?
「今までアンタの事…はっきり言って嫌いだった。獣か病原菌みたいに思ってた。ごめんね、私って言葉も性格も悪いの。」
「…お、俺は人間だっ!」
「そうね、私の好きな人だもの。人間じゃなきゃ困るわ。」
咲山が間の抜けた顔をする。本当に似合うわね。
「咲山のしつこさ…いえ、一途さには完敗だわ。それに見た目と違って可愛い顔するし。性格もまぁ…私の理想と真逆な所が清々しくさえ感じる。とにかく、私は咲山のことが可愛いくて好き。」
そう言って笑うと、咲山は目から大粒の涙を次から次へと零した。
「麹町…っ」
「何?」
「お、おれもっ…好きっ」
「知ってるわ。」
「うっ…ふっ…好きぃ」
咲山が顔を崩して(とても不細工だわ)泣くもんだから、今度は私が抱きしめてやった。
「ほんと、女の子みたいね。」
「…ちが、うっ」
「分かってるわよ。こんなデカい女がいるわけないわ。」
「ふぅっ…うっ…やっと、振り向いてくれたっ」
あぁ…私の制服が咲山の涙と鼻水でどろどろ…これは即クリーニング行きね。
「ごめんね、待たせて。」
「…ぅん。」
咲山が伏せていた顔を上げ、私の唇の端にそっとキスをした。
「大好き。」
顔をふにゃりと赤らめた咲山の可愛さは破壊力抜群だった。
再び咲山を押し倒して、唇を乱暴に奪う。今度は深くて理性も無くすほどぐちゃぐちゃになってしまう熱いキスで。
咲山をまた泣かせてしまった事は言うまでもない。
画して、私と咲山は恋人同士になれた訳である。
咲山にとっては実に3年目越しの恋であった。
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