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「お前は結局どーしたいんだよ。」

「…お前なんか死ねばいいと思ってる。」

「…チッ」


思わず舌打ちが出て、シンプルで閑散としている部屋に響く。

「…で、も。」

「…」

「…」

「言えよ。」

片山は顔を赤らめたまま俯いて泣いている。膝の上で拳が痛いほどに握られている。

「…言えない。」

「…いい加減しろよっ」

「…俺には言う資格がない。」

「…」

「…それにやっぱり、お前の事きらいだ。」

本当に…難しい奴だなコイツは。


「…お前、俺の事。好きなんだろ?」


片山は顔をあげた。ひどい面だ。






そして、どの位の時間が過ぎたかは解らないが。片山は俺に近づいてくる。妙な距離で止まり、そのまま動かない。

外では雨が降っていた。

こんなに雨音をはっきりと聞いたのは初めてかも知れない。

俺が片山に近づくと、片山も顔を近づける。そのまま俺らの唇は合わさった。

それが正しい事の様に。真の答えの様に。

キスをしていると云うのに、何故コイツは泣き止まないのだろう。

少し強引に舌を入れてみたら、それはあっさりと受け入れられた。

舌を甘噛みしてやると、片山は全体重を俺に預けてきた。

俺は何をしているのだろう。



互いに舌を絡めて。そのまま、もつれてフローリングの上に倒れ込む。

片山に肩を叩かれて漸く唇を離してやる。

「…大場。」

「何。」

「…俺が謝ったら、お前は謝ってくれるか?」

何を言ってるんだ、こいつは。

「何で俺が謝るんだよ。謝るのはお前だろ?」

片山はその言葉を聞いて瞳を揺らした。


「…やっぱお前なんか、きらいだ。」

「だったら俺から離れろよ。」

片山はぴったりと俺にくっついて離れない。

「…今は、こうしていたい。」

そう言って頬を俺の首元にすり寄せた。

雨が降ったせいか、室内は気持ち悪い位に生暖かかった。


まるで俺らの関係の様だ。陰鬱でどろどろとしている。


何もしない。ただ男同士で身を寄り合わせている。異様だ。


「片山。」

「…」

「お前、ちゃんと帰れよ。」

「…帰るよ。ばぁちゃんが心配だし。」


ばぁちゃんとは以前片山ん家で見かけた、あの優しそうな老婆だろうか。


片山はまだあの家に住んでいるのか。子供ながらにあの家の何とも言えない厭な感じが怖かったのを覚えている。

俺の頭の中で、あの屋敷に住んでいる優しげな老婆が嗤っていた。








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