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俺は教室を出て行く前にもう一言付け足した。

「お前が俺の事嫌いでも構わねぇよ。俺にも原因があったんだろ。…俺はどうせまた近々転校する。それまでお互いもう関わらないようにしようぜ。」


その時の片山の顔は傑作だった。ただ、俺は一刻も片山から離れたくて、その顔を楽しんでいる余裕が無かった。


アイツから虐められたのには原因がある…か。そんなに嫌われる様な事をした覚えはない。…結局、アイツとは最初から折りが合わなかったんだよ。



教室を出て行ったものの、途中でカバンを忘れたことに気づいたのだが今更取りに戻る気にもなれず、そのまま自宅マンションに帰ってしまった。







◇◇


その日の夜、俺の部屋に来訪者が来た。

誰かを確認せずにドアを開けた事に早速後悔した。


「何でてめーが俺ん家知ってんだ。」

「…関係ねーだろっ」


関係ないってどうゆう事だ?何それ怖い。

どうやって俺ん家調べたんだ。黒田先生か?


「お前、何しに来たんだよ。」


俺の投げやりの声に片山はいつまでも反応を返さない。


ふと、片山の手元を見ると、奴の手に俺のカバンが握られていた。へんてこなキャラクターのキーホルダーが付いているから俺のカバンで間違いないはずだ。



「そのカバン、俺のなんだけど。」

「…」

おそらく、片山が俺ん家にまで届けに来たのだろう。


「俺、わざと学校に置いてったんだけど。」

「…」

「余計な事すんなよ。」

片山がどんどん涙目になっていく。心なしか体が小刻みに震えている。

「おい泣くなよ、てめー。毎回女みたいに泣きやがってまじ何なの。意味わかんねー。」


片山の目から雫が落ち始める。


始まった。本当に意味わかんねー。

とりあえず、こんな所で泣かれても恥ずかしいから家に引き込んだ。


「泣くな、めんどくせぇ。」

「…」

家の玄関で何やってんだ。もぅ、マジで助けて欲しい。


「…れ、だって」

「は?」

「俺、だって。意味わかんねーよ。めんどくせーのも分かってるっ。仕方ねーだろ。泣きたくなんかないのに、泣けてくるんだ。」

片山は制服の袖で涙を拭う。それでも次から次へと涙が溢れてくる。


「もぅ…わかんねー。お前なんか大嫌いなのに…」

「…本当にお前、俺の事嫌いなのか。」

「…きらい。」

俺も意味が解らない。いつの間にか片山を居間にまで上げてるし。何か向かい合って座ってるし。








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