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「お前は、こう言ったよな?片山。お前が好きだ。キスしてくれ、って。」
そこまで言うと、片山はポロポロと泣き出した。相変わらず俺を睨んでいたが、涙は溢れ出して止まらなかった。
俺はしゃがんで、片山の顔を見つめて言ってやった。
「なぁ、どっちがカマ野郎なんだ?」
片山の背後にいた舎弟達の様子が明らかに変わっていた。
「気持ちわりぃ…」
「ただのホモ野郎じゃねぇかっ」
「もぅ行こうぜっ」
舎弟達は屋上の扉へと向かっていく。最後の一人が唾を吐いてった。
「俺らも行こう。」
山田君も前田さんの手を引いて歩き出した。
屋上には俺ら2人しかいなくなった。
「お前、牛乳臭ぇよ。この季節はヤバいな。雑巾みてぇな臭いがする。」
「……クソ野郎がっ」
未だに牛乳が皮膚を弾いて浮いており、精液みたいだった。
片山の顎に指を掛け、顔を上げさせる。
あの、青木 秀緒がなんだか情けなく感じた。
「もう、俺に構うなよ?」
片山は顔を歪めたまま動かない。
「山田君にも…てか、虐めはもうやめろ。」
ポロポロと涙を零すばかりで、俺の話を聞いてるのか聞いてないのか分からない。
「…返事は?」
「…うぅっ」
もう、何だかよく分からない。片山は唸るばかりだし。
片山に顔を近づけると、僅かに体を跳ねさせた。
チュッ…
軽く唇に押し当て、すぐさま離れた。
片山は顔を赤らめ、目を伏せていた。睫毛に乗った雫が綺麗だった。
「いいか、これでもう構うなよ。」
俺がそう言うと、片山は俺の両頬を手で挟み込み、そしてキスをしてきた。
俺は暫くびっくりして動けないでいた。目の前では顔を赤らめている片山がいて、泣いていた。辛い、と泣いているようだった。
「泣いたって駄目だ。俺はお前にされた事を忘れられない。殺したい位だ。俺はお前が嫌いなんだよ。」
片山は俺の肩に顔を埋め抱きつき、静かに泣いていた。
「…お前、まだ俺の事が好きなのか?」
有り得ない。あれから何年経ってると思ってんだ。
俺は片山に抱きつかれながら、背筋が凍りつく思いだった。
片山から答えが返って来ないのが、せめてもの救いだった。
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