ぽっきぃの日



※11/8の後日話


「今日はぽっきぃの日というらしいぞ」

つい先日も同じような言葉を投げかけた俺に凛は怪訝そうな表情をする。その首筋には未だに消えてない跡があり先日もこんな流れから閨事になったな…と思えば凛も同じことを思ったらしい。

「つい数日前も同じようなこと言ってなかったっけ?」
「皆日にちで何かをするのが好きなんだな」
「ふーん…ぽっきぃって何?」

その聞き覚えのない単語に凛は少しだけ興味を持ってくれたようだ。なんだかんだ言って凛は俺に甘い。そんなところも愛しくて堪らないんだ。

「俺も分からなくて善逸に骨を折ることか?と聞いたら怖いと怒られてしまって…」
「それは物騒だね」
「これがぽっきぃらしい……けど、」

そう言って俺はぽっきぃの日とやらを教えてくれた先輩から渡されたものを凛に見せれば凛は目をまん丸くして数回瞬きをした。

「……?胡瓜だよね?」
「胡瓜だな…?」

そう。俺が先輩に手渡されたのは立派に育った胡瓜であった。

凛と二人で手にした胡瓜を眺めてうーんと首を捻る。どう見ても胡瓜だ。しかもなかなか立派な胡瓜だ。塩揉みにしてあるらしいからこのまま食べられるらしいが「ぽっきぃの日」はこの胡瓜を恋人同士が両端から食べて先に口を離したほうの負けだという。一体なんの勝ち負けなのか。凛にそう伝えると凛もよく分からないといった感じで首を捻る。まあ、この胡瓜を譲ってくれた先輩にも悪いしとりあえずやってみるかと胡瓜を口に含むがなかなか大きい。ちらりと凛に目をやれば

「んぅ、お…おっきぃ……」

小さい口を懸命に開けて胡瓜を頬張ろうとする姿が目に入る。それはとても、とても…目に毒だ!!やっとの思いで頬張り口から溢れないよう両手を添える。え、わざとなのか?わざとなのか凛…?俺が固まっているとちらりと涙目で上目遣いをして凛が俺を見てくる。うん、無理です。

バリっ!と良い音を立てて俺は胡瓜から口を離す。凛は胡瓜を咥えたまま驚いたように俺を見るがそんなもの無視して凛を抱き締めるとそのまま首筋に顔を埋めまだ消えきっていない跡を舐め上げた。

「んぅ!?んっー…!」

咥えていた胡瓜を口から離し凛が戸惑ったように俺を見てくる。

「何!?ぽっきぃの日をするんじゃなかったの!?」
「凛が悪い」
「え?私が勝ったから…?でも炭治郎がすぐに胡瓜を離しちゃったんじゃ…」
「いやらしすぎる凛が悪い!」
「は!?」

無自覚も大概にして頂きたい。俺はもう、その胡瓜に嫉妬してしまうくらいには凛に溺れてしまっているのだ。
胡瓜は翌日美味しく頂きました。…もちろん切って食べました。






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