報告書は間に合いました




私は今、報告書を一生懸命作成している。階級が低かった頃はあまり詳細には作っていなかったが柱という立場になるとそうもいかない。どんな鬼がいたか、何が効果的だったか。そしてそのために隊士達はどのような訓練をすればいいか等。真剣に作成しようと思えばいくらでも筆は進む。これは大切な仕事なのだ。
だというのに。私の恋人である日柱こと炭治郎は私の部屋に来るなりずっと私の腰にしがみ付いている。熱を帯びた声で「凛…」と名前を呼んできたため「終わるまで駄目」と言えば彼のようなよく効く鼻がなくても炭治郎が落胆したのは目に見えて分かった。
だけど駄目なものは駄目だ。特に今日の炭治郎は私が一月任務に出ていたこともあって相当お預けを食らった後なのだ。一度許してしまえば最後。炭治郎が満足するまで解放されることはないだろう。なのでとりあえず仕事を終えてから──

「ひゃあ!?」

ぞろり、と。何かが私の首を這う。確認するまでもない。我慢の限界がもうきたのか…!?

「た、炭治郎!駄目だってば」
「うん。凛はそのまま報告書を書いていてくれ」

想像よりも大分低い声にまずい、と思う。
抱きついている間ずっと私の匂いを嗅いでるなぁ。それで辛抱できるならまあいいか…と思っていたがこれが逆に炭治郎を「その気」にさせてしまったのかもしれない。我慢しきれなくなった炭治郎がもっと盛る前に後これだけでも終わらせなければ。

「あっ、痛ぁ!」

がぶりと首に炭治郎が噛み付く。先程私の首を這ったのは間違いなく炭治郎の舌だ。それだけでは飽き足らず今度は噛み付いてきたのだ。しかも首筋に。

「炭治郎!跡はつけないでって…!」

そう言う間にも炭治郎はそこを強く吸う。ぴりっとした痛みに確実に跡がついたことが分かる。
まずいまずい、完全にヤる気になっている炭治郎をどうするべきか。思い切り拒絶すればやめてくれるかもしれないが、私だって炭治郎と会うのは一月ぶりで正直離れたくはない。だけどまだ、報告書が終わってないのだ。この男、いつもは長男だからとか言って我慢強いくせに…!

「あ、やっ…!」

ぐるぐると色々なことを考えている間に寝巻きである浴衣の隙間から炭治郎が手を差し込む。後ろから抱き抱えられるようにして胸の突起を摘まれれ背中に快感が走る。

「やぁ、た、たんじろっ、ひっ!」

くちゅり、といやらしい音が響く。炭治郎が耳に舌を入れている。ぞわぞわとした感覚は止まらず体がどんどん熱くなっていくのが分かる。
──無理だ。そう悟ると私は持っていた筆を机の上へと置く。それに気付いた炭治郎は一旦攻めの手を止めた。

「? 凛…?」

くるりと振り返って思い切り炭治郎を睨み付ければ炭治郎は思った通り欲情しきった顔をしている。

「もう、長男は我慢強いんじゃなかったの?」
「俺は長男だけど、凛に関しては我慢できない!」

曇りなき眼でそんなことを言われればもう諦めるしかない。

「……明日の朝報告書手伝ってね…」

そう伝えると炭治郎は楽しそうに笑い「何枚でも手伝うよ」と言って私を押し倒すのだった。


***


俺はもう本当に凛に会いたかったし一秒でも早く抱きたかったのだ。
出先から戻ると凛の匂いが屋敷に広がっている。今日戻ってくるとは聞いていたがその匂いを嗅ぐのも久々で胸が高鳴る。それと同時に股間にも熱が溜まる気がした。

凛が任務についていた一ヶ月。俺の方も忙しくしていたため全く自慰をする余裕はなかった。そのためか久々の凛の匂いにくらくらする。早く、早くもっと凛を堪能したい。そう思い襖を開けると凛は文机に向かっていて俺の方を振り返ると可愛らしく「おかえり」と言った。
それはこっちの台詞だろうと思っていると凛はまた文机へと体を向けてしまった。報告書を作っているのだろう。それは鬼殺隊士としては当然の姿だ。…分かってはいるが、俺は気付けば凛の背中にぎゅうっと抱きついていた。

「凛…」
「終わるまで駄目」

俺の意図を察したのか凛はこちらも向かずにそう言う。確かに仕事を蔑ろにしてまで俺とまぐわうのは間違っているのだろう。頭では理解しているのだが、凛の匂いにどうしても昂ってしまう。
そのまま匂いを嗅ぎ続けていると凛のうなじに目がいく。ずくん、と下半身にまたしても熱が溜まった気がする。─舐めたい。そう思うのと同時に俺は凛のうなじをべろりと舐めていた。

「ひゃあ!?」

突然のことに凛が声を上げる。それで俺の中の理性はどこかへ飛んでいってしまった。
一度決壊してしまえば理性というものは脆いもので俺は何度も凛のうなじに唇を落とす。

「た、炭治郎!駄目だってば」 

困ったように頬を赤く染めてそう言う凛は俺にとっては逆効果でしかない。

「うん。凛はそのまま報告書を書いていてくれ」

俺がそう言うと凛は少し悩んだ後、再び文机へと向かった。明らかに匂いは変わっている。これは期待している匂いだ。凛は口では待てと言っているのに期待をしているのだ。それがますます俺の加虐心に火をつける。

「あっ、痛ぁ!」

がぶりと首に噛み付けば凛は驚いたような声をあげる。もっと、もっと俺の跡を凛に残したい。白く艶かしい肌を見ると全て食い尽くしたくなる。

「炭治郎!跡はつけないでって…!」

凛はいつも見えるところに跡をつけるなと言う。確かに噛み跡なんかが首筋にあったら注目を浴びてしまうだろう。でも、俺からすると男避けにもなるため凛のあらゆるところに跡を残したいと思っているのだが…あまりやると凛が本気でヘソを曲げてしまう可能性もあるため俺は噛むことを一旦やめてそこを強く吸えばくっきりと歯形と赤い跡が凛の首に残っていて堪らない満足感に襲われる。

「あ、やっ…!」

だんだん抑えることができなくなったのか凛の艶っぽい声が聞こえてくる。匂いもいやらしいものに変わっている。─堪らない。
俺は抱きついていた手を動かし凛の浴衣へと差し込むと隊服の時には巻いていたはずのサラシは巻かれておらず柔らかい胸に手が触れた。ふにふにと揉んだ後にきゅ、と突起を握れば凛の体がびくんと跳ねる。

「やぁ、た、たんじろっ、ひっ!」

可愛い可愛い、抱き潰してしまいたい。凛の真っ赤になった耳に舌を差し込みわざと水音をさせてくちゅくちゅと舐めれば凛はもう体を丸めてぶるぶると震え始め─筆を机の上へと置いた。

「? 凛…?」

まずい、怒らせてしまったかもしれない。ここでお預けなんかにされたら堪ったものじゃない。
いや我慢出来ずに触り始めた俺が悪いのだから凛が怒るのは当然だが…お預けだけはその、許してほしい…!
くるりと振り返った凛は目に涙を浮かべ頬を紅潮させ肩で息をして──明らかに情欲の表情を浮かべていた。

「もうっ、長男は我慢強いんじゃなかったの?」

俺を睨みつける凛があまりにも可愛らしい。今すぐ押し倒して滅茶滅茶に犯したいほど、その姿は可愛らしかった。

「俺は長男だけど、凛に関しては我慢できない!」
「……明日の朝報告書手伝ってね…」

それは凛からのお許しの合図。
俺は即答で「何枚でも手伝うよ」と言い凛を押し倒しその唇を奪うのだった。





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