彼女は有名人


おれのストーカー…じゃなくて。いや合ってるか?まあ、おれにご執心なリンはボーダーでも瞬く間に有名な存在になった。元々トリオン量が凄まじいという噂はあったけれど太刀川さんとの個人ランク戦でその片鱗を見せつけたのだった。

「いやないわ!なんだあれ!?おま、その拳銃からなに撃ったんだ!?」
「メテオラ。効いたでしょ?」
「効いたも何も、俺木っ端微塵だったろ」
「まあ私の手も一緒に木っ端微塵になったんどけどね!」

おもしれー!と太刀川さんが楽しそうにしていたのを覚えている。リンのトリオン量の数値は26と計測されている。一言で言うのなら化物だ。シールドは割れないし弾切れはしない、もちろんトリオン切れも見たことがないとまさしく異質だった。その数値は上層部も目を引くほどで、凄まじいメテオラを拳銃から放つという凄技を披露したリンを知らない者はボーダー内ではいなくなっていた。

「お疲れ。あっという間に有名人だな」
「迅くん。ヤキモチ妬いちゃう?」
「いや、妬かないけど」
「素直じゃないんだから」

リンは相変わらずだけどおれとはこのように軽口を叩く仲にはなっていた。リンは間違いなく変なやつだけど嫌なやつではない。好きだと好意を伝えてくるもののおれに見返りを求めてくるわけでもなく。ていうか、本気でおれのこと好きなんだろうかと疑ってしまうほどにはサッパリとしている。そんなリンとは正直付き合いやすかった。あ、人間としてな。

「サイドエフェクトの結果も出たんだろ?」
「うん。勘がいいってさ」
「勘?」
「分かりにくいよね。でも身に覚えはあるから納得はしてるよ」

リンのサイドエフェクトは飛び抜けて勘がいい、と判定されたらしい。まあサイドエフェクト自体未知のものが多く全てを理解出来る人間はいないだろう。おれの未来予知だって言葉にするのも想像するのも簡単だとは思うが実際は…、…いや、まあそれはいいや。

「なるほどね。だからおれが行きそうな場所が分かるってわけ?」
「ううん。迅くんが行きそうな場所が分かるってよりはここに行けば迅くんに会える気がするって感じ」
「同じじゃない?」
「そう?」

でも私はこのサイドエフェクトにずっと守られてきたよ。リンの言った意味はすぐに分かることとなった。




「いや凄いな。リンには本当に当たらないな」
「不意打ちも決まりにくいな!やっぱりサイドエフェクトのおかげなのか?」
「多分…?なんとなく分かるんだよね」
「俺の隠れていた位置や嵐山が迫ってたことには気付いてたのか?」
「いえ、2人とも上手に隠れていたので私では見つけれませんでした。攻撃を避けてやっと認識しましたね」

まだまだ未熟で恥ずかしいです。と、本気で言うリンは東さんの狙撃も嵐山の奇襲も見事に避け切っていた。
どうやらリンのサイドエフェクトはかなりのものらしく、危機察知に長けているらしい。一度見失うと狙撃手がいても見つけ出すことはかなり難しいらしく、逃走経路の確保にも効くとのこと。

「ま、俺に見つかれば終わりなんだけどな」
「ぐっ!太刀川くんは強すぎるからさぁ」
「俺もほぼ負けたことがないな」
「風間さんも強すぎるんですよ」

とはいえリンは銃手としては中堅クラスで寄られれば落とされやすい。その驚異的なトリオン量で敵を巻き込んで自爆する手もあるけれど本人があまり乗り気ではないため行われることは殆どない。サイドエフェクトもトリオン量も強力なものを持っているけれどリン自身は普通の戦闘員っていうのがおれや上層部の見解。

「あ、迅くん!私のお迎えかな?」
「いや違うけど?」
「照れ屋なとこも好きだよ」
「はいはい」

でもさ、おまえには強くなってもらうしかないんだよ。他の国から見たらどんな手を使っても欲しいくらいの逸材なんだから。






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