サイドエフェクトと共に(終)


「付き合うことになったのか!おめでとう迅、リン!」
「まじか。ストーカーした甲斐があったな」
「ありがとう!式には呼ぶからね!」
「いや気が早すぎない?」

今まで散々迷惑をかけてきた嵐山と太刀川さんにリンと付き合うことになったと報告すると二人とも嬉しそうな表情を浮かべてくれる。おれの腕に抱きついているおれの彼女はここにいる誰よりもご満悦な表情をしているけど。

「いやー、やっと観念したか迅」
「本当にな!見ているほうはもどかしかったぞ!」
「え?なにが?」
「「え」」

太刀川さんと嵐山の言っている意味がよく分からずに聞き返すと二人が驚いたような声を重ねた。そしてなんだか凄く楽しそうに笑う三人が見える。まあ、この未来なら悪いことを言われることはないのだろう。

「なにって。おまえリンのことずっと好きだったろ?」
「え!?」
「ああ、迅が自分の気持ちに正直になれて俺も嬉しいぞ!」
「ちょちょ、ちょっと待って!おれ、リンのこと好きだった…?」
「迅くん!自信持って!」

いや、確かに!
おれはリンのことを嫌いじゃなかった。本部に来ればきっとまたリンが来るんだろうな、とか思ってたし…あれ。今思うとおれ、リンが来るだろうなって期待してた…?
いやいや!そりゃあ、あれだけ好きだと裏表なしに言われれば悪い気はしてなかったけど…あれ、でもおれ好きでもない子とそういうことしようなんて思わない、よ、な…!?

「なんだ自覚してなかったのか?顔が赤くなってきたぞ」
「いいじゃないか。今、自覚した愛を噛み締めてるところなんだろう」
「やだ、迅くん可愛い…!」
「ちょ、うるさ!やめてくれないかな!?」

確かに俺が見えた未来通り三人とも楽しそうに笑っているけれどこんな未来になるなんて、読み逃したにもほどがある。このままここにいると嵐山はともかく太刀川さんにはずっと揶揄われる気しかしない。さっさとこの場から退散しよう。

「あ、そういえば准くん。今夜の解説私とだよ」
「リンとなら楽しく解説が出来そうだな」

……………。

「准くんと一緒だとギャラリーが多いんだよね。モテ男ー」
「そんなことはないと思うが…」

……………………。

「おーいお二人さん。迅が拗ねてるぞ」
「「え!?」」
「べ、つに拗ねてないよ」
「え!?拗ねてる!可愛い!好き!」

なんでなんで!とリンはちょっと不機嫌なおれになんてお構いなしで嬉しそうに抱きついてくる。…全く空気を読んでないこんな行動でも、ちょっとだけ、可愛いと思ってしまうのはもう末期なのだと思う。

「なんで、」
「うん?」
「……嵐山のことは、名前で呼ぶの」

……………。
無理だ。もうここにはいられない。そう思ったおれはダッシュでこの場から逃げることを選んだ。

「待って!待ってー!悠一くん!悠一くーん!!」

うるさっ!
本当に勘弁してほしい。真っ直ぐな愛情も素直な行動もおれに向けられる優しさも、どんどん好きになってしまうのが悔しい。



『悠一くん』

そう呼ぶ少し未来のリンが見える。凄く幸せそうな表情だ。これからもきっとおれは多くの未来を見て、多くを選び切り捨てるのだろう。辛いことも逃げ出したくなることもあるかもしれない。でも、おれが今見える未来には確かにリンがいる。この未来を守れるようにこれからも付き合っていこうな、おれのサイドエフェクト。


 
「迅のあんな顔初めてみたな」
「ははっ、あの二人なら上手くやっていけそうだな」












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