どんなゴリラかと思えば



「太刀川さん、今度の大規模侵攻の時さ」
「本部で待機だろ?で、その後は忍田さんの指示に従えって」

迅が俺を見つけるなり「いたいた」と声をかけてくる。近々近界民による大規模な侵攻が行われるのが見えたらしい。相変わらず難儀なサイドエフェクトだな、なんて思いながらもそのサイドエフェクトと迅の実力のおかげでランク戦の相手としてはこれ以上ないライバルとして俺は迅を買っていた。
迅はあまり未来について公言することはない。それこそ自分の私欲で話すことはないだろう。今回の大規模侵攻については上層部まで交えて話しているところを見るに本気でやばい規模なんだろう。何か見えている迅の指示に従わない理由はない。俺はちゃんと言われたことを覚えてるぞ、と確認すれば迅は首を横に振った。

「本部で待機はしてほしい。けど、自由に動けるようになったらすぐにここへ向かってくれる?」

忍田さんにはもう伝えてあるから。そう言って迅が地図を差し出してくる。赤いペンで丸がつけてある場所。ここで何か起こるのだろう。

「ふーん。別にいいけど何か見えたのか?」
「うん。見えたよ」
「へぇ。俺が行かないとやばいのか」
「そうだね。太刀川さん。ここに何かが現れる。それを出来る限り、…いや、出来れば最後まで足止めしてほしい」
「……へぇ」

足止め、ときたか。

「倒してもいいんだろ?」
「うーん。今回は防戦に徹してほしいかな」
「なんで」
「獲りに行った場合、分が悪い」

迅が言うということは間違いないのだろう。つまり次の大規模侵攻で俺と互角かそれ以上のやつが現れるってことだ。なんだよ。

「まじかよ。面白そうだな」
「結構重要な役割になるからよろしくね、太刀川さん」
「太刀川りょーかい」


そして迅の予知通り本部を狙ってくる近界民は確かに現れた。俺は忍田さんに指示された通り空を飛んでくるでかい近界民を斬り伏せ、忍田さんに確認を取り迅が言っていた場所へと向かうことにした。その道中に近界民がいれば迷わず斬ること。襲われている隊員がいれば救助すること。そう言われ俺は道中で村上や他の隊員を救護しながら近界民を斬り伏せていく。
歯応えがない。どうせなら俺のところにも人型の近界民が現れれば面白そうなのに。忍田さんにも「迅に託された相手を足止めすることを最優先にしろ」って言われてるし、来るなら早く来いよなー。

そんなことを考えていると誰がベイルアウトした。続いてもう2人。本部へと戻って行くそいつらがどこの隊の奴らなのか。それよりもそいつらがやられたのは俺が今向かっている場所なのかが気になる。

『慶!人型近界民が目的地にいる。至急対応しろ!』
「太刀川了解」

きたきた!と胸が高鳴る。迅にああ言われたから防戦に努めようとは思っているけれど叶うことなら全力で斬り合いてー!と、はやる気持ちを抑えながら現直すると、


「えっ」

そこには刀を持った女が1人立っていた。

「…………」

現着した俺にそいつはゆっくりと目を向ける。どこからどう見ても普通の女の子だしなんなら結構美人だ。
……こいつが?分の悪い俺の相手…?

「斬ると、みんな飛んで行ってしまう」

女がそんなことを言ってくる。まだ敵意は感じられない。純粋な疑問を口にしてるようだ。

「ああ。俺らの国ではそーなってんだよ」
「どうして?」
「戦場で生身に戻ったら危ないだろ」

俺の言葉に女は「そう」と短く返事をした。
そして纏う空気が変わる。おいおいまじかよ。あんな見た目してるくせに隙がない。こんなヤバそうな相手久々で嬉しくなるぜ。
俺が弧月を手にして構えると女も手に持った刀を構え直す。

「いい国ね」

そう言うと女は凄まじい速度で俺に斬りかかってくるのだった。




back


×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -