好きって必要?
セックスはきもちーけど女はめんどくせー。
それが俺の偽らざる本音。
「なんだ。また女を泣かせたのか」
「風間さん言い方ひどくない?」
俺の顔を見るなり風間さんがそんなことを言ってくる。俺の顔にはそれはもう見事に手跡が残っていて今回はおまけに引っ掻き傷付き。生身の時にやられたからいてーの。こんな傷誰かに見られれば絶対なんか言われるのは分かってたから本部ではずっと換装をしていたけれど帰る前に自販機で飲み物でも飲んでくか、って油断したところを風間さんとばったり出くわしてしまった。
「おまえの女癖には呆れる。すぐに手を出す癖をなんとかしろ」
「でも溜まるもんは溜まるし…風間さんだってそうじゃない?」
「おまえと一緒にするな」
そう言って風間さんはポケットから何かを取り出して俺に押し付けてこの場を後にした。押し付けられたのは絆創膏。風間さん、なんだかんだ優しいんだよなぁと思いながら俺はその絆創膏を引っ掻き傷の上へと貼るのだった。
ぶっちゃけるとこういうことはよくあった。俺はまあまあ女から誘われることが多い。で、勃つなと思ったら応じるんだけどあいつら一回ヤると彼女面してくるんだよ。流石に何回かこういうことがあってからは学んで「付き合う気はない」と伝えてからヤッてるというのに中には後になって「不誠実だ」とか言って逆ギレするやつがいんの。一回忍田さんにバレた時はキレられるなんてもんじゃないくらい叱られたから面倒な女に引っかからないよう気をつけるようにはしてたんだけど…今回の女はしつこいタイプだったなー。やらかした。
女ってめんどくせーな。でも溜まるしなぁ。
彼女を作るのが1番だって言われるしそれは俺も分かってるんだよ。でもなー。
「実際太刀川さんってどんな子が好みなんすか?けっこーモテますよね」
防衛任務中、近界民も現れず暇になった俺は出水に女ってやっぱり面倒くさいな、と零すと察したように乾いた笑いを返した後にそんなことを言われた。
「まあな。好みなぁ…美人で胸はデカいほうがヤるならいいな」
「そういうことじゃなくて…好きな子とかいたことないんすか?」
「ないね。出水、おまえはあるのか?」
俺が即答すると出水は少し驚いたような表情を作る。なんだよ。おまえはあるのかよ。
「えっ。うーん…幼稚園の時とか?あんま覚えてないや」
「だろ?惚れるとかの前にヤれるか、になるぜおまえも」
『太刀川さんさいてー』
「国近はチームメイトだからな。別枠別枠」
『もー、太刀川さん。そろそろ下半身じゃなくて心でおんなのこを見ないとだめだよー』
「ボクもそう思います!」
はいはい、と生返事をしてこの会話は切り上げることにした。流石に女の国近にこれ以上聞かせるわけにもいかないしな。
『あ、近界民の反応だよー。150m先だね』
「了解」
国近のオペに誘導されながら俺たちは出現した近界民の討伐へと向かう。近界民と戦ったりランク戦をしたり。俺はそういうことのほうが好きなんだよ。だから彼女とかはほしいと思ってないし、そもそも出水の言う好みの女ってやつが分からなかった。何回かセックスして思ったんだよな。美人だなとかヤりたいなとか思ったことはあっても俺、惚れたことねーなって。
愛がなくても利害が一致してればセックスは出来るし彼女に求めるものってそれ以外あんの?…なんて誰かに言ったらドン引きされるのは分かってるから言わない。
ただまあ。純粋に恋してるやつを見ると羨ましくもなるぜ。俺もいつか誰かに恋をするのかね。
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