遺されたものたち | ナノ


▼ 懺悔の気持ち


「斎藤、遊真君……」

そう言って私たちの元へと歩いてくる忍田さんは深刻な表情を浮かべている。…本当に申し訳ない。どう考えても私のせいだ。謝って許されるものでもないけれどとりあえず謝ろうと、忍田さんが私に目線を合わせるようにしゃがみ込んでくれたので口を開くと

「斎藤、すまなかった。私の認識の甘さのせいでおまえをこんな目に遭わせてしまった」
「ごめ、……えっ」

私の謝罪の言葉を遮るように忍田さんは本当に申し訳なさそうに言葉を続ける。

「謝って許されることではない。それでも、謝らせてくれ。すまない、斎藤…!」
「まっ、待ってください!なんで忍田さんが謝るんですか…!?」

あれは私の油断が招いたことだ。忍田さんはどの国についても注意を怠るなと。常に警戒心を持てと言ってくれていた。だというのに私は自分の目的に夢中でどこか浮かれていた自覚すらある。唯一良かったのは修が巻き込まれなかったことくらいでこの傷だって自業自得としか思ってなかった。

「私こそごめんなさい。沢山迷惑をかけて、今もこんなところまで忍田さんを出向かせてしまって…」
「ん?こんなところ!?」
「あ、ちがう!そういう意味じゃない!私にとってここはオアシスだから!」

私の言葉に鋭いツッコミを入れてくるデュイさんのおかげで張り詰めていた空気が少しだけ和らぐ。うっ、ありがとうデュイさん…!

「ありがとう斎藤…それでも、私はこの遠征の責任者であり大人だ。隊員でありまだ子供のおまえを危険に晒したことは許されることではないんだ。本当に、申し訳ない…」
「……」

自分を責めてしまう人を見ると心苦しくなる。その辛さを私は知っているから。でも、私は許してほしい人にはもう会えないけど忍田さんは幸いにも私は生きている。だったら。

「わかりました。謝罪、受け取ります。そして許します」
「え……」
「被害に遭った私が許したのでもう大丈夫です!そんな顔もしないでください。ね?」

すまないと、申し訳ないと私に言っているのならそれを許してもらえれば少しは心も軽くなるだろう。まあ、私はもともと怒ってないので許しますっていうのも変な感じだけど…懺悔を受け止めてもらえるだけでもきっと違うと思うから。

「……斎藤は優しいな」

忍田さんに笑顔が戻る。よかった、間違ってなかったみたい。


「……ユーマ。リンって人たらし?」
「すっごい人たらし。しのださんじゃなかったら候補入りだ」
「あんたも大変ねー」


……なんか遊真とデュイさんが呆れたようにこっちを見てるんですが。なに!?

「斎藤、聞いてほしい」
「あ、はい!」

遊真とデュイさんの会話も気になるけれど真剣な表情でそう切り出した忍田さんの話のほうが間違いなく重要だろう。忍田さんはそのまま言葉を続けてくれる。

「我々の遠征艇は予定通り2週間後に補給を終える。そこで提案だが、」

あ、そうか。まるまる1週間ほぼ寝たきりだったということはこの国に留まれるタイムリミットも迫っているということ。そしてそれは

「あ、そうですよね。私のことは置いてアフトクラトルへ向かってください」

こうするのが全方面にとっていいことだろう。
だというのに忍田さんは信じられないような顔をして「えっ!?」と返答してくるのだった。



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