※長時間戦闘試験の設定とかは適当



失敗した、という自覚はある。
長時間戦闘試験は過酷なもので王子先輩に進言して私とイコさんは18時間を越えたあたりで隠密をしながら行動をすることにした。イコさんは隠密は性に合わないから嫌がったけれどイコさんが何もせずに落とされてしまうのはまずい。既に帯島ちゃんと辻くんが落とされてしまっていて状況は悪い。隠密からの生駒旋空がうまく決まれば…と思っていたところを北添隊に見つかってしまった。

(菊地原くんのサイドエフェクトか…!)

最悪の場合、北添隊に見つかるとは思っていたけれど本当に最悪の場合を引くとは。自分の浅慮と不運に内心凹みながらもイコさんに内部通信を送ることにした。

『イコさん、私が囮になるので逃げ切ってください。王子先輩と合流すれば──』

その瞬間、目の前に海くんが現れる。

(ステルス!?そうか、隊員のトリガーをシャッフルして…!)

スコーピオンも間に合わない、シールドも弧月相手では割られてしまうだろう。せめて時間を稼がなければとイコさんのいた方向を向くとそこにイコさんの姿はなく、目の前が少しだけ暗くなった。

「そらあかんやろ、リンちゃん」

なにがあかん、のか。私を背に庇うように海くんの一撃を防いだイコさんは海くんと同じようにステルスで隠れていたゾエさんに落とされてしまったのだった。


***


「イコさん!なんで私を庇ったんですか!駒損なんてもんじゃないですよ!」

長時間戦闘試験終了後。反省会というかほぼ雑談なような雰囲気の中私はイコさんに詰め寄った。

「あぁもったいない…!イコさんは強いんですからあんな簡単に落とされちゃダメじゃないですか!私が落とされてる間に逃げてほしかった…」
「いやいや、そらあかんて」
「だから、なにがあかんのですか!」

ゾエさんに落とされる前も同じようなことを言っていた。あかんやろって。あそこでイコさんが落とされる以上にあかんことがあると思えないんですが!

「好きな子守れんなら戦う意味ないやろ」
「………なっ、」
「あれ?俺言うたよな?リンちゃんに惚れとるでって」
「なっ、なな、な、」
「言うじゃねえかいこまー!」

光ちゃんがパチンっと指を鳴らす。いや、その。確かに言われた。でもいつもの真顔で言ってくるからはいはいって流してたんだけど、なにあれ。あれ本気だったの…!?

「生駒さんかっこいいっス!」
「ほんま?俺輝いとる?」
「ほ、褒めちゃダメだよ帯島ちゃん!ね?辻くんからもなんとか言って…!」

すがる思いで辻くんに助けを求めるとだいぶ慣れてきてくれたものの私からすぐに目線を逸らして辻くんは意見を言ってくれる。

「た、確かに…あそこで生駒さんが落とされるのは…勿体なかったかもしれない、よ」
「だ、だよね!?」
「でも…好きな人が目の前で危ない目に遭ってたら、俺も生駒さんと同じことをする、かもしれない…」
「ひっ…そ、そんな顔真っ赤にして言わないでよ辻くん…!」
「ご、ごめん」

こっちまで照れてしまう!やめてくれ!
そんな私たちをにこにこといつも通りの笑顔で見守っている我らが隊長王子先輩。結局そこまで良い点数も稼げなかったというのにあの余裕。読めない。王子先輩の考えはいつも読めない…!

「いいんじゃないかなこれはこれで。イコさんは好きな人と組ませると後先考えずに庇っちゃうよーってことが上も解ったと思うしこの先は出来る限りリンとは組ませないんじゃないかな?」
「王子先輩、もしかして怒ってます?」
「僕が?まさか!いいものを見れたと思ってるし二人を同じチームに入れてよかったと思ってるよ。今のは感情とか抜きにした結論。むしろ本番前に解って良かったと僕は思うよ」

むしろ上の人たちには感謝されてもいいんじゃないかな、なんて言いながら朗らかに笑う王子先輩はやっぱり私とは見てるものが全然違うなと感心してしまう。もっと先のことを、もっと違う目線で物事を考え見通している。凄い人だな…

バチっとイコさんと目が合う。
なんだかむず痒い気もするけど、するけど!

「でも!私は私のせいでイコさんに落ちてほしくなかったですからね!ばか!」

そう言ってぷいっとイコさんから目線を逸らしてしまう。これが全てだ。私のせいでイコさんが落とされてしまった。それが悔しくて堪らない。イコさんが私を庇って落とされてしまうというなら私はイコさんよりも強くなるかしぶとくなるしかないじゃないか。

「リンちゃん…」
「なんですか!謝っても暫くは許しませんからね!」
「怒った顔もかわええな」
「もぉーーーーーっ!!!!」




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