※10月号最新話のネタバレが完全にあります
いやまあ。京介がスーパーモテ男だってことは理解してますよ、ええ。京介が本部にいた頃からランク戦をやればギャラリーが集まって気が滅入ってたからね。だから京介とはあんまランク戦やりたくないって何度言っても私を見つけてはランク戦を持ちかけてくる京介を私は可愛い後輩だなーくらいにしか思ってなかったわけ。
最初の頃は私の方が強かったのにどんどん実力を上げて挙げ句の果てには太刀川隊に所属してトントン拍子でA級1位になった頃には1対1でも京介に勝つことは難しくなるくらい京介は腕を上げていた。
強くなったね、私じゃもう相手にならないでしょ。って言ったらなんて言ったと思う?
「俺、強くなりましたか?」
「え。嫌味かな?」
「いえ。リン先輩言ってましたよね。自分より強くない男とは付き合わないって」
このスーパーモテ男にそんな風に言われて恋に落ちない女はいるのか?いや、いないね。だって私はこの瞬間まで京介のことは「ただの可愛い後輩」だとしか思ってなかったのに次の瞬間には恋に落ちてたからね。こうして私と京介は無事お付き合いを始めて今に至るのです。が。
深夜。防衛任務でしっかりとお仕事をこなした私がスマホを手に取ると何件かメッセージが入っていた。いつものように一つ一つのメッセージに目を通しながら紙パックのジュースを飲みつつ──ごふっとそれを吹き出した。
「なんだ、汚いぞリン」
お互い防衛任務を終えて合流したレイジさんに汚いと叱責されるもののこれが吹き出さずにいられるか。メッセージ主は小南。内容は、
『ちょっと!とりまるが修に売られたわよ!』
なんかよく分からないけどすっごく不穏なものであった。
「デっ、ん!?なに、デートするの!?香取と!?」
「まあ…修たちの遠征のためなら…?」
「わ、私以外の女と…でっっ…!」
防衛任務からそのまま駆けつけて私とレイジさんは京介と小南と審査官を交代することとなっていた。この試験が始まってからお互い時間があまり取れないので交代時に会えるだけでも嬉しかったりするのに、今日は小南のメッセージの真意が気になって気が気じゃない。
そしてやっとメッセージの意味を理解した私は半泣きで京介に詰め寄った。
「う、浮気…!?」
「いや、報酬にされた」
「やだー!香取可愛いじゃん!!もしかすると、ほら、何か芽生えるかもしれないじゃん…!」
確かに京介はモテるけど全然他の女の子に靡いたことはない。デートに誘われても即答で断るし、連絡先を聞かれても軽く流したりと芸能人か?と思うくらいにはガードが固いのだ。
でも、でもさ。一線?を越えちゃったら分からないじゃん。そもそも香取と私だと香取のほうが可愛くない?あんな可愛い子とデートして、何も感じないとかあるのか!?
「リン、落ち着け。本当に京介が他のやつを好きになると思うのか?」
「お、思わないよ!信用してるし…で、でもさぁ…」
嫌なもんは嫌なのです。
レイジさん、そんなに冷静に言うけどさ!
「じゃあレイジさんはゆりさんが他の男とデートしても平静を保てる!?」
「……っ!うっ、ぐぅ…!」
「ほらー!?嫌でしょ!?嫌なのよ!」
想像しただけで思った以上にダメージを受けたレイジさんは口出しをしなくなった。完全な八つ当たりでした。ごめんなさいレイジさん…!
…いや、分かってるよ。録画…見たもん。修のチームのエースは間違いなく香取だし、京介は修たちに遠征に行ってほしいって本気で応援してる。香取のやる気が出るなら師匠である自分が人肌脱いでやろうって。京介は優しいからそう受け入れたんだろう。……わかるけどさぁ。
「……ごめん、取り乱した」
ぐすっ、と。
半泣きだった涙を拭って一呼吸吐いて京介の顔を見る。我儘言ってごめんね。デートがんばってね。そう言おうと覚悟を決めたのに京介は手を口に置いてなんだか凄い嬉しそうにニヤニヤしている。なに!?
「な、なんで嬉しそうなの!?」
「いや。リン、俺のことそんなに好きなんだなって」
「んなっ……!」
嬉しそうにそう言う京介に一気に顔に熱が溜まるのが分かる。いや、そりゃ。好きでもない相手と付き合うわけないでしょうが…!
「俺ばかり好きなのかと思ってた」
「へ、」
「修に感謝だな」
「いや!私は修を恨むよ!私の京介を断りもなく売るなんて…!」
結構本気で怒っている私とは対極に京介はやっぱりどこか嬉しそうに笑う。俺ばかり好き?冗談はやめてほしい!
「言っておくけど!私のほうが京介のこと好きだからね!?」
「いや、俺のほうが好きだから」
さらっと。
そんなことを言ってしまう京介に敵うはずもなくぼふっと京介に抱きつけば京介は優しく抱き返してくれるのだった。
…修、試験受からなかったら許さないからね!
「俺には無理だ…ゆりさんが…他の男と…」
「結局いつも通りイチャイチャしてるじゃない、あの二人」
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