※空閑と付き合ってる


深夜の防衛任務を終えた仮眠を経た私はある場所へと向かう。そう、今は閉鎖環境試験中で私はその審査に関わっている。私は、というよりも一部を除くA級隊員と私達のような玉狛のメンバーは全員関わっているのだけど。審査といっても最終的な決議を決定するのは上層部だし私達の審査も審査する…というものなのだろう。

「お疲れ様でーす」
「お、リン。お疲れ。いやー面白いことになってるぞ」
「面白いこと?」

席に着くなり迅にそんなことを言われる。なんだろう。どこかの隊のトリオンでも切れただろうか。それとも私達が思いつかないような面白い案を提案した隊員でもいるのだろうか。現在の状況をリアリタイムで審査するのもいいけれど私達の審査は録画を見て遡って行うことも出来る。迅が「まあ見てみなよ」と選択したのは……歌川1番隊。今日の私の担当ではない隊だけどなんだろう、と画面を見ているとそこに映し出されたのは就寝前の状況だ。遊真と漆間くんがツイン部屋で話している…?

「おまえ、斎藤と付き合ってるってマジ?」
「うん。付き合ってるぞ」

…………はい?
いや、あの。はい?何話してるのこの二人?修学旅行の夜じゃないんだよ試験中だってこと覚えてますか!?

「へぇ。あいつお堅そうなイメージだったけど人並みに恋愛とかするんだな」
「そうなのか?リンは初めて会った時から可愛かったぞ」

続けるの!?いや、これ審査されてるどころか録画されてるんですけどやめて頂けないかな!?大体こんな試験になんの関係もない話をしてたら審査員のA級隊員からマイナスが入ってもおかしくない──

『佐鳥 +2 くわしく!』

いやくわしく、じゃないんだわ!
遊真も漆間くんもコメント見れないからね!?

「可愛いかぁ?いやまあ顔は悪くないけど…顔で選んだわけ?」
「確かに顔も好きだけど性格も好きだぞ。恥ずかしがり屋だし素直じゃない時もあるけどそんなとこも可愛いよ」

「待ってなにこれダメでしょこれは!」

居ても立っても居られず立ち上がると迅は楽しそうにニヤニヤしてるし隣のブースを覗き込めば親指を立てた当真くんと腕組みをして生暖かい目線を送ってくる冬島さんと目が合う。くそ!絶対この二人もうこの録画見てるだろ…!

「まあまあ。思わぬハプニングは試験にはつきものだからなー」
「いや被害に遭ってるの主に私じゃない!?」
「ほら、続きもあるぞ」
「まだあるの!?」

迅に促されて渋々もう一度席に着くものの既に満身創痍だ。遊真、その。別に嬉しくないわけではないけど時と場合は考えてほしい。いや頼む。そんな私の願いとは裏腹に遊真は大変楽しそうな表情を浮かべている。くっ、好き…!

「ふーん。で?どこまでやったわけ?」
「それはヒミツですな」
「んだよ、気になるじゃねーか」

『当真 +1 全部言っちゃ面白くないよな』
『緑川 +1 めっちゃ面白い』

いや君たち審査の仕方間違ってるからね!?生放送番組じゃないんだわこれ!なに、めっちゃ面白いってもはやただの感想だよねそれ!?
あと当真くんやっぱり見てるじゃん!くそ!

「そういえばこれも審査されてんのか?」
「む?」
「ほら、最初に沢村さんの声が聞こえてきただろ。それと同じやつがあそこについてるしこれも見られてるんじゃねーか?」

ふむ、と遊真と漆間くんがカメラの存在を思い出してカメラに目線を送る。よし、いや良くないけど。それでもカメラのことを思い出したのは偉い。漆間くんめっちゃ悪い笑顔浮かべてるけどまあ良しとしましょう!これでこの話はおしまいだろう。はあ、なんだったんだ。辱めなのか?何か試されてるのか私は…!?

「リンー」
「!?」

あろうことかカメラに向けて遊真が私の名前を呼んで手を振っている。は、何やってるんですか遊真?

「あいしてるぞー!」

遊真の行動に流石の漆間くんもちょっと呆れたようで「はいはいごちそーさまでした」と言って二人の会話はお開きとなった。そしてA級評価はというと。

『嵐山 +1 いいものを見せてもらった!』
『冬島 +1 若いっていいね』
『時枝 +1 ご馳走様でした』
『米屋 +1 永久保存版だろこれ』
『一条 +1 めっちゃ青春じゃん!』

この夜だけで遊真はかなりのA級評価を稼いだんじゃないだろうかってくらいの+の入り方だ。いや、馬鹿なのかな?いいねボタンじゃないんだよこれ?まだ見てない隊員もきっと遊真の+ポイントの多さにこの録画は間違いなく目にするだろう。……せめてあまりマイナスがつかないことを祈るしかない、かな…

「な?面白いことになってただろ」
「いや面白いというか恥ずか死ぬというか…」
「はは、でも嬉しそうじゃんリン」

迅の楽しそうな声になにも反論出来ない。そりゃ、そりゃあ嬉しいですよ!あれってつまり、遊真は惚気てたんでしょ漆間くんに。私のことを話してる時の遊真は楽しそうで満足そうで私の大好きな顔をしてたし最後にはあんな言葉をカメラ目線で残すし……

「……これ」
「ん?」
「この日の録画、売ってもらえないかな…」

私の言葉に迅がぶはっ!と吹き出したのは言うまでもない。



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