トリオン兵は愛を知る | ナノ

File:5 三雲修


タマコマシブには昨日出会ったニンゲン達以外にももう少しメンバーがいるらしい。とは言っても暫く帰って来ないメンバーもいるようでとりあえずタマコマシブに足を運んだメンバーには私のことを紹介してくれるということになった。

「というわけで、この子はトリオン兵のリンちゃん!暫くうちで暮らすことになるからよろしくね修くん、千佳ちゃん」
「と、トリオン兵…!?」
「この女の子が…?」

シオリが私のことを二人に紹介してくれる。男の子はオサム、女の子はチカという名前でユーマのチームメイトだそうだ。

「はじめましてリンです。トリオン兵です。よろしくお願いします」
「よ、よろしく…」
「よろしくお願いします…」

二人は礼儀正しくお辞儀をしてくれるので私もそれに習ってお辞儀をし返すと二人は顔を見合わせたあと、ちょっと困ったような。だけど優しい笑顔を向けてくれた。


「ユーマ、これはなんですか?」
「これは箸だよ。こうやって使うんだ」
「やってみます」

昼食の席で初めてハシというものを目にした私は隣に座っているユーマに使い方を使用してみることにした。しかしこれはとても難しい。ユーマの手元を見て見よう見まねで形を真似てみても、ものを掴むことが出来ない。ちらり、と同席していたオサムとチカの手元を見ても二人とも器用にハシを使いこなせている。

「難しいです。オサムとチカも上手にハシを使えていますね」
「あ、うん…ぼく達はずっと箸を使ってるから」
「リンちゃんもすぐに使えるようになると思うよ」
「おれも最初は使いこなせんかったしな」
「良ければスプーンとフォークを持ってこようか?」

オサムが魅力的な提案を投げかけてくれる。がハシというものを理解したいという気持ちが勝って断るものの、ハシをちゃんと使いこすことが出来ずキリエに「あんたいつまでかかってんのよ」と言われ結局すぷーんを渡されるのであった。


タマコマシブでは基本自由にして良いと言われているけれどあまり一人を好まない私は目についた人の側に身を置くことにしていた。今日はユーマがタマコマシブに残っているようなのでてれびというものに驚いたりしているとオサムが私達の元へと合流した。

「空閑、リン。何をしてるんだ?」
「リンにテレビを見せようと思ってな」
「箱の中にニンゲンがいるんですね…狭くないんでしょうか」

私の純粋な疑問にユーマとオサムは顔を見合わせて楽しそうに笑う。どうして笑っているのかは分からないけれど二人が楽しそうなのは嬉しく感じる。

「はじめの頃の空閑を思い出すな」
「おれもそう思う」
「はじめの頃のユーマですか?」

私の言葉にああ、と二人は頷く。

「おれもこっちの世界のことは何も知らなかったからな。オサムやチカに色々と教えてもらいました」
「まあ…知らないのは仕方ないことだし。でも赤信号だけは心臓に悪いから気をつけてくれ」
「りょーかいりょーかい」
「こっちの世界?ユーマはちがう世界からきたんですか?」

その言葉にオサムが少しだけ気まずそうな顔をする。聞いてはいけないことだっただろうか。どうしても考えるよりも先に好奇心が口から出てしまう。困らせるつもりはなかったので返答はいらないと口にしようとすると

「おれは近界民だよ」

ユーマがそれよりも先に私の疑問に答えてくれた。

「空閑!言って良かったのか?この子は一応その…」
「リンの国は知らんがリンは悪いやつじゃないからな」
「そうか…そうだな。あまり隠し事をするのはぼくも好きじゃない」
「オサムらしいな」
「あの、私ユーマのこと誰にも言いません。ごめんなさい、気になるとすぐ聞いちゃうんです」

申し訳なさから謝罪の言葉を口にするとユーマもオサムも「何も謝ることじゃない」と言ってくれる。

「ぼくも気になることがあるとすぐに行動しちゃうから気持ちは分かるよ」
「オサムも?」
「うむ。オサムはこう見えて好奇心旺盛なのです」
「好奇心旺盛って…いやまあ、否定はしないけど…」

ユーマの言葉にオサムは苦笑いを浮かべながらも肯定の言葉を口にする。二人の間に流れる空気はとても心地が良い。まるで一緒にいることが当たり前のような安心感すら感じられる。

「ユーマとオサムはとても仲良しなんですね」

その事実が嬉しくて口にすると二人は隠すこともなく

「オサムはおれの相棒だからな」
「空閑はぼくの相棒だから」

信頼に満ちた返事を返してくれた。



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