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捕獲したトリオン兵について記述
責任者:鬼怒田本吉
破壊時のショックにより記憶の一部にロックがかかっている状態。軍事機密について現在は有力な情報は思い出せていない。
他に攻めてきた人型トリオン兵とは違い見た目は14.5歳の人間の少女にしか見えない。こちらの動揺を誘うための扮装と推測。内部トリオンは相当のもので普通に生活をするだけなら暫くトリオン充電の必要はない。
態度は至って優良。空閑遊真のサイドエフェクトに一度も反応せず真実を口にしてる模様。
迅悠一及び空閑遊真。そして林藤支部長の推薦により玉狛支部に捕虜として預けることを決定。
逃亡及びこちらに害があると判断した場合は捕獲、または破壊すること。 以上
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「というわけでリン!今日はいよいよ我らが玉狛支部に移動する日だよ」
「本当ですか!」
ユーイチの言葉に思わず歓喜の声を上げてしまう。きぬたさんやライゾーが頻繁に訪れてくれるこの環境は決して嫌なものではなかった。けれどこの狭くてガラス越しの部屋がどうしても苦手だった私はここから出られるということに喜びを隠せなかった。そして、
「ユーマと一緒に過ごせるんですか!」
「うむ。今日からおれとリンは同じ屋根の下ってやつですな」
「どこでそんな言い回し覚えたんだおまえは」
私が移動する玉狛支部という場所はユーマもユーイチもほとんど滞在しているらしくてそれが嬉しくて堪らない。表情に出ていたのかユーイチはそんな私を優しい表情で見ている。
「はは、嬉しそうで何よりだよ。リンは遊真と本当に仲が良いな」
「嬉しいです!ユーマに会えるのはしあわせです!」
「照れますな」
もちろんユーイチやきぬたさん達に会えるのも嬉しかったけれどユーマは私の中で特別だ。ユーマに出会った時に私は少し記憶を取り戻せたし、リンという名前をつけてくれた。そして何よりユーマはいつも優しかった。最初の頃はまだ少し怖かったきぬたさんを宥めてくれたり私の記憶とは関係のない話をしてくれることもあってその存在に救われていたのだ。
「少しでもおかしなことをしたりトリオンが切れそうになればすぐに本部へ戻すこと。記憶は戻り次第空閑を通して真偽を確かめた上で報告をすること。この二つが守れなかった場合は無理矢理にでも連れ戻すからな」
「はい!きぬたさんありがとうございます」
そう言ってお辞儀をするときぬたさんは難しい顔をしたまま、だけどやっぱり以前より少しだけ優しくなった表情でこの狭い部屋から私を送り出してくれた。
ユーイチの後をユーマと一緒に歩いていく。ガラスの向こう側にはこんなにも世界が広がっていていくら歩いても果てがなさそうだ。
「さ、これに乗って玉狛支部に移動するよ」
「これはなんですか?」
「車っていうんだ。トリオンも食わないし何人も一緒に速く移動できる優れものだぞ」
「くるま…」
ユーマに説明してもらいまじまじとこのくるまという大きな箱を観察しているとユーイチが扉のようなものを開けてくれた。どうぞ、と促されてくるまに入ると中にいた一人の男性が声をかけてくる。
「はじめましてリンちゃん。俺は林藤。今日からリンちゃんが過ごす玉狛支部の代表だ」
「リンドウ、はじめまして!リンです。どうぞよろしくお願いします」
どんどん新しく話せる人が増えて嬉しくなってしまう。この箱はユーマが説明してくれたように何人も一緒に入れるようで私に続いてユーマとユーイチも入るとどういう仕組みなのかは分からないけれど移動を開始した。ガラス越しに見える景色は私の記憶には全くないものだ。空は青く地は緑に溢れていて活気がある。その景色は釘付けになってしまうほど
「きれい」
「む? なにかあったのかリン」
「はい。とてもきれいです。この国はきれいですねユーマ」
「そうだな。おれもそう思う」
「ははっ、綺麗か。嬉しくなっちまうな迅」
「ですね」
そしてタマコマシブという場所に着くまで景色を堪能して人の多さに驚いてと感動を覚えていた私に更に驚きの景色が待っていた。
「さ、着いた。ここが玉狛支部。リンちゃんが今日から過ごす仮家ってとこかな」
「水の中に建物があるんですか!?」
「うむ、いい反応だな」
「厳密には水の中ではないんだけど…リンが気に入ってくれたならまあいいか」
下を覗き込めば水がどこまでも広がっている。なんてきれいなんだろう。そのまま次は上を見上げるとどれだけ手を伸ばしても届かない青空が広がっていた。ここには壁もガラスも何もない。記憶はまだほとんど戻っていないけれどこんな風に外に出たのははじめてのような気さえした。
「リン、楽しそうだな」
「はい!楽しいです!」
「そりゃ良かった」
「きっともっと楽しいことが待ってるさ」
「さてと。じゃあ中に入るか」
そう言ってリンドウが建物の扉を開ける。期待に胸を膨らませているとそこには──
「あ、おかえりー。その子がトリオン兵ちゃん?」
「ちょっとボス!なに自由にさせてるのよ危ないじゃない!」
「おちつけこなみ。まずはあいさつからだ」
とても賑やかな女の子と男の子の姿があって私は期待で胸がいっぱいになるのだった。
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