トリオン兵は愛を知る | ナノ

File:20 空閑遊真


シオリとキリエとお昼ご飯の片付けをし終えて三人でソファーに腰を下ろす。今日のお昼ご飯はキリエが得意とするカレーで本当に美味しかった。ここに来て初めて食べたのもキリエが作ってくれたカレーで私の中で最上級の食べ物となっている。

「ねえねえ、今日あのドラマの最終回でしょ!」
「ああー!再放送でやってたもんね。見よう見よう」

キリエの提案にシオリが答えててれびの電源を点ける。最初は驚いたもののもうてれびというものにも慣れてきた私はキリエとシオリと一緒にどらまというやつを見ることにした。そういえば最初の頃にユーマがどらまという単語を口にしていた気がする。あれは何の時だったかな。
どらまというやつは男女の恋愛模様を描いたもので綺麗な演出や音楽で二人の恋が実るのを見守るといった構成だった。

「はぁーー、ときめいた…!くぅー!」
「うんうん、愛だねぇ」
「愛、ですか?」

私の疑問を含んだ声にシオリはうん、と優しく頷いてくれる。

「お互いのことが好きで思いを伝え合って両思いになって。こうやって愛が育まれるんだね」
「? 私はシオリやキリエが好きですけどこれは愛とは違いますか?」
「ふふ、そうだね。アタシもこなみもリンちゃんのことは大好きだけど愛ってのはやっぱり特別なんだよ」

シオリは優しい声色のまま続けてくれるしキリエは腕を組んで難しそうな顔をして「特別な愛ねぇ……?」と呟いている。確かに私が読んできた本にも愛とは多数の者ではなく子や恋人のことを指すものが多かった。家族、または家族と同等なほど情を持っている相手に送る言葉なのかもしれない。

「リンちゃんもきっと素敵な愛に出会える時がくるよ」
「ていうかまずあたし達も出会いたいんだけどね!」

確かに!とキリエの言葉にシオリは笑うのだった。



「ユーマは誰かを愛したことがありますか?」
「唐突ですな」

昼の防衛任務から帰ってきたユーマと屋上で話していた時にふと、昼のキリエとシオリとの会話を思い出したので尋ねてみるとユーマは苦笑いをしている。愛とはあまり軽く口にするような話題ではないのかもしれない。

「えっと。お昼にキリエとシオリとどらまを見てそんな話になったんです。私は二人のことが好きですけど愛はそれとは違うって」
「ふむ、なるほど」

うーん、とユーマは腕を組んで唸っている。大体のことにはすぐに答えてくれるユーマが言い淀んでいるのを見るとやっぱり気軽に話題にしてはいい内容ではないのかもしれない。ユーマに迷惑をかけるのも嫌だし早めにこの話を切り上げようと私は自分の中での結論を口にすることにした。

「私は愛というものはよく分かりません。シオリは特別だと言っていました。私にとって一番特別なのはユーマなので、もしかしたらいつか私はユーマを愛するのかもしれませんね」
「───」

ユーマのことが大好きだ。タマコマシブの皆もきぬたさんも大好きだけれどユーマだけはやっぱりどこか特別で許されるならいつも一緒にいたいと願うほどに。それを愛と呼ぶのかはまだ分からないけれど、愛するならユーマが良いと思った。

「リン、それは告白って言うんだぞ」
「え?告白…ですか?」
「むう…まいったな」

困ったような口振りとは裏腹にユーマは楽しそうな表情を浮かべている。告白、それは先ほどのどらまで見た愛を伝える行為のことだろうか。確かに思い返せばそうと取れる言葉を口にしていたことは確かで。

「あ!でも!まだこの感情は未確認なので放置で大丈夫です!」
「これが弄ばれてるってやつですかな?」
「そ、そんなつもりじゃ…!」

なんだか頭の中がぐちゃぐちゃで思考がまとまらない。そんな私を見てユーマは楽しそうに笑っていてそれをとても嬉しく感じている私がいる。なんだろう、この感情は初めて感じるものだ。

「わ、私!少し部屋で頭を冷やしてきます!」
「ははっ、りょーかい」

ユーマから逃げるように屋上を後にする。きっと落ち着いて情報を整理すればこの感情の正体も分かるはずだ。そう思いながらも部屋に着くまでずっとユーマの笑顔が私の頭に張り付いている。確かにユーマの笑顔は大好きだけどなんだかいつもと違う。もしかしてこれは本当に──


『ロック4 解除』


部屋に着いてドアを閉めた瞬間、電子音が響いた。



「ふむ…おれはトリオン兵と相性が抜群なのかもしれないな、レプリカ」



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