今日も屋上で青空を堪能してリビングへと戻るとソファーの上に何枚かの紙を広げて何かを見ているオサムの姿が目に入る。
「オサム、何をしているのですか?」
「わっ!」
よほど集中していたのか私に全く気付いていなかったオサムは手に持っていた四角い物体を床に落としそうになったのでそれをキャッチするとオサムを汗を浮かべてふぅーと大きめの溜息をついた。
「ありがとう、受け止めてくれて…」
「いえ、突然声をかけてすみません…」
「いや、それは全然構わないよ」
四角い物体をオサムに返すとオサムは笑顔で受け取ってリンも見てみるか?と提案をしてくれる。オサムが何をそんなに集中して見ていたのか気になっていたのですぐにオサムの隣に腰を下ろしてその四角い物体を覗き込むとそこには沢山のニンゲンが写っていてどうやら戦闘をしているようだ。
「これは…」
「これはランク戦っていって、ぼくと空閑と千佳でチームを組んで挑戦してるんだ」
「ああ!例のチーム、ですね!」
私の言葉にオサムは頷いてくれる。この四角い物体は過去の戦闘を写しだしてくれる優れものでそれを参考に作戦を立ててらんく戦とやらに挑むらしい。
「チカは人を撃つのが怖いと言っていましたよ?」
「ああ、千佳には無理をさせたくないからな…」
真剣な表情で画面を見ながらオサムは散らばった紙に何かを書き込んでは画面を見直して、という繰り返しをしている。らんく戦とやらがどういう仕組みなのかはよく分からないけれどオサムは相手に勝つつもりで作戦を練っているのだろう。
「らんく戦で勝つと栄誉がもらえるんですか?」
「いや、そんなんじゃないよ。ぼく達は遠征を目指しているんだ」
「遠征…?」
「上位になれば遠征に行けるかもしれない。千佳のためにも…空閑とレプリカのためにも絶対に勝たなきゃいけないんだ」
「れぷりか」
その名前を知っている。そういえばユーマが何回か口にしたことがある名前だ。友人の名前かと勝手に認識して尋ねたことはなかったけれどれぷりかとは何者なのだろう。
「れぷりかって、ユーマの友人ですか?」
思ったままのことを口にするとオサムは私のほうを見て少しだけ言い淀んだあと
「空閑の…空閑の家族でぼくの恩人だ」
それだけを言って言葉を切ってしまった。
言いたくないことだっただろうか。聞いてしまってはいけなかっただろうか。…いや、そんな感じではなかった。れぷりかに何があったかは知らないけれどオサムは負い目を感じているように見える。
「じゃあ、頑張って勝ちましょうオサム」
「え?」
「遠征に行ってすっきりしましょう!そのためには勝つしかありません」
希望が残っているのならそれを目指せばいいだけだと思う。それはきっと口にするのは簡単でとても難しいことなのは画面越しの戦闘レベルの高さから推測は出来た。それでもやるしかないのなら前だけを向いて進んでほしいと思う。
「…うん、そうだな!頑張るよリン」
「はい!応援しています!」
そう私に宣言したオサムはいつもよりどこか頼もしい表情を浮かべていた。
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