炭治郎はいつも真っ直ぐだ。その真っ直ぐさは時々眩しすぎるくらいで、だけど炭治郎らしくて気に入っている。
凛への恋心を自覚した炭治郎は顔を真っ赤にさせていて面白かった。まあ、俺は炭治郎から聞こえてくる音で分かっていたのだけど本人が自覚なかったみたいだからさ。自分で気付いたら応援してやろうと思ってたわけ。俺よりも先に恋人を作るとか許せるわけがないんだけど、炭治郎のあんな顔を見せられたら応援しないわけにもいかないよなぁ。

「善逸…」
「炭治郎。え、どうしたんだよ?」

そんなことを考えていると本人が目の前に登場した。なにその音。なんでそんなどんよりした音させてるの?俺なんか炭治郎にしたっけ。

「…凛に」
「うん?」
「ごめんと言われたんだが…」

………。展開早くない?


***


蝶屋敷の庭で意中の人物を見つける。今までは彼女を見つけると嬉しかったが、恋心を自覚してからはそれだけでは治らない。心臓の音がやけにうるさいし少しだけ緊張してしまう。

「炭治郎?」

俺を見つけた凛は固まってしまった俺のほうへと歩いてきてくれる。それだけのことなのに嬉しくて、愛おしい。俺は本当に凛に恋をしたんだな。
……駄目だ、俺に隠し事は出来ない。
どうしたの?と俺の顔を覗き込む凛両手を包み込むように握って覚悟を決めた。

「凛、好きだ」
「え?」
「好きなんだ、凛」

難しいことなど何も考えられず同じ言葉を繰り返してしまう。生まれて初めて人を好きになって、その想いを本人に告げた。こ、これは、心臓が口から出てきそうだ。思わず瞑ってしまった目を恐る恐る開けると凛は悲しそうな顔をしていた。

「ごめん」

握られていた手を振り解き、俺の目を見ずにそう言う凛からは全く拒絶の匂いがしていなかった。



***


「だから俺は諦めないでこれからも想いを告げようと思う」
「うん、全然分からない。今の説明とお前の回答が全然繋がってないことに気付いて?」
「ど、どうしてだ!」

どうしても何も完璧に振られてるじゃん!?炭治郎、世間一般ではそういうのは脈なしって言うんだぜ。告白した返事がごめんって。俺も何度も聞いてきたから間違いなくその答えは脈なしだろう。うるせえよ!

「凛からは悲しい匂いがしていて…だけど俺のことを拒絶するような匂いは一切させていなかったんだ」

炭治郎は鼻が効く。効くなんて優しいものじゃない。その嗅覚で人の感情なども読み取ってしまう優れものだ。俺の耳と似たようなものなのかな、と話したこともあるがまず間違いないだろう。その炭治郎が拒絶された匂いがしなかったというのならそれは事実なんだろう。
正直に言えば俺も炭治郎と凛は上手くいくと思っていた。炭治郎からは自覚してからは凛に対して凄い音がしていたけど、凛も炭治郎には誰よりも優しい音を向けたことを知っているから。なんで断ったんだろう凛。お前にとって炭治郎は間違いなく特別だったはずなのに。

「…まぁ、凛に本気で怒られるまでは頑張ってみたら?」
「! ああ、応援してくれてありがとう善逸!」

眩しいくらいの笑顔を浮かべる炭治郎を見るとこいつには幸せになってほしいなと、素直にそう思えてしまう。凛が何を思っているのかは俺には分からないけど上手くいくのか、駄目なら本気で断ってくれよな。と俺は願うのだった。


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