凛と恋仲になって数年後、俺は柱に就任した。
珠世さんとの研究のおかげで禰豆子を人間に戻すことに成功し、禰豆子は今陽の下を歩いている。嬉しかった、人として陽の下を歩く禰豆子を見た時には涙が止まらなかった。良かったと、凛も善逸も伊之助も他の皆喜んでくれた。

俺は幸せ者だ。失ったものも確かにあったが人の縁にも恵まれ今となっては何不自由なく暮らせている。しかし姿を隠した無惨の行方は分からず今でも世には鬼が存在する。
禰豆子を人間に戻すまで沢山の人に支えられ、本当に助けられた。その気持ちを無碍にすることなど出来ない。俺は煉獄さんのような柱になる。その思いは未だに健在であった。だけど、死ぬ気はない。俺が死ねば禰豆子を一人にしてしまうから。そして、彼女との約束を守るために。

「炭治郎」

愛しい声が聞こえる。振り返るとそこには大好きな恋人の姿が。

「凛」
「日柱就任おめでとう」
「凛も、雪柱就任おめでとう」

俺は柱、日柱と名と階級を貰い凛も柱、雪柱という名前と階級を貰っていた。
彼女はとても強く柱になるには相応しい存在だと思う。だけど俺は不思議だった。何故なら彼女は、

「凛はどうして柱になったんだ?なる気はないと思っていたから」

そう、彼女は柱という地位に興味はないと言っていた。自分よりも相応しい人もいるし譲っても構わないと。しかし俺が日柱と名を貰うと決めた時、彼女は自分も柱になると意見を変えたのだ。

「だって、私も柱になれば炭治郎一人に無茶をさせなくて済むでしょ」
「え?」
「炭治郎が死んだら禰豆子ちゃんが悲しむし。それにその、私だって悲しいし……」

もじもじと。俺から目を逸らして凛が言う。いつまで経っても、いやむしろ時を重ねるごとに愛らしくなる俺の恋人にどうにかなってしまいそうな衝動をなんとか抑え込み俺は凛に向き直る。

「俺の…ために?」

柱というのは名前だけではなく責任も任務も過酷なものになると聞いている。相当の覚悟がなければ実力があろうと引き受けようと思えるものではない。だけど凛は、俺のためにその責任を負おうというのか。

「好きな人のために」

ふふっ、と凛が可愛らしく笑う。もう限界だった。抱き寄せて唇を奪うと凛はそれに応えるように背中に手を回す。深く深く口付ける。このまま、喰らい尽くしてしまいたい。それほどに彼女が好きだ。
暫くそうしていると凛が俺の背中を叩き出した。うっ、もう駄目だというのか。渋々と唇を離すと凛は肩で息をして頬を赤らめていた。

「な、長い…っ!」
「…もう駄目か?」
「駄目です!」

もっとしたかったのにな…と落ち込む俺を見て凛はやっぱり優しく笑う。その表情を見る度に好きだという気持ちが募っていく。気付けば俺は凛の両手を包み込むように握っていた。

「凛、好きだ」
「え?」
「好きなんだ、凛」

あの日。初めて告白をして振られたあの時と全く同じ言葉を同じように紡ぐ。凛もそれに気付いたのか楽しそうに笑う。

「私も好きだよ、炭治郎」

握っている手はもう振り払われることはなく、凛からは幸せの匂いがしていた。



「屋敷はそれぞれに与えられるって言ってたけど私達は一つでいいよね」
「えっ」
「え?一緒に住めば良くない?あ、勿論禰豆子ちゃんも一緒にね」
「…………」
「炭治郎?」
「…そういうところだぞ、凛」
「?」

無自覚で俺が喜ぶことを当たり前のように言う凛。
…俺は一生凛には敵わないんだろうな。






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