番外編:俺にとっては満点R15


陽射しが強くなり蝉もミンミンと元気良く鳴いている。俺はいつも通り昼は美術室へと向かいキャンパスの前へ立つのではなく、いつもは生徒が座っている椅子へと腰を下ろす。滅茶苦茶低くて最初こそ慣れなかったが今となってはいつも通りの体勢に足を組んで頬杖をつく。職員室で過ごしても良いのだが昼休みの職員室は案外生徒の出入りが激しくてあまりゆっくり出来ないことが多かった。生徒達が嫌なわけではないが元気な姿は「アイツ」を思い出すことが多くて俺は美術室で昼は過ごすようになっていた。美術室のある棟は昼はあまり生徒が出入りすることなく比較的静かに過ごすことが出来るため気に入っている。
まあ、今年からは静かに過ごせなくなったんだけどな。

「宇髄せんせ、アイス買ってきましたよぉ」

涼しげな夏服を身に纏って俺を「天元様」ではなく「宇髄先生」と呼んで凛が美術室へとやってくる。教師と生徒である俺と凛は不自然に距離を詰めることは出来ないが凛が「美大に行きたい」と隙を見つけては俺に指導を受けに来ていることになっているのだ。悪い女だ。美大に行く気なんてさらさら無いくせに。

「おう凛。気が利くじゃねーか」
「あは、もっと褒めて良いんですよぉ」

どうぞ、と凛が棒アイスを渡してくる。それはソーダ味でさっぱりとしていて美味い。あっという間にアイスを平らげた俺と違って凛は棒アイスをちまちまと舐めているため全然食べ終わっていない。

「ははっ、食うの遅いなお前」
「宇髄先生が早すぎなんですよー」
「ふーん?でも溶け出してんぞ?」
「あ!やだー」

そう言って凛は手に垂れてきていたアイスをぺろりと舐め上げる。たったそれだけのことなのになんだか、まあ、エロいんだよな。凛はまだ十五歳だっていうのに前世の記憶があるせいか他の生徒と比べても色気が凄まじい。前世から変わらない余裕のある飄々とした態度に虜になるやつも出てくるだろう。俺もその一人だと自負しているし今世でも凛が密かに人気があるのは耳に入っているため俺としては面白くないのも確かだった。

「うずいせんせ」
「ん?」
「えっちな顔してるー」

アイスを食べ終えた凛が空っぽになったアイス棒で俺を指しながら悪戯っぽく笑って首を傾げる。は?可愛すぎかよ煽ってんな?
本能に従うならこのまま押し倒して滅茶苦茶にしてやりたいのが本音だが卒業までは手を出さないと約束したためなんとか堪えている…のだけど凛はそんな俺を試すかのようにこのように煽ってくるからタチが悪い。

「…お前、三年後覚悟しとけよほんと」

俺がそう言うと凛はいつも本当に嬉しそうに笑ってくれる。畜生、惚れたもん負けじゃねえかこんなの。その笑顔が見れるならなんだってしてやりたいって思うんだよ俺は。



「そういえば明日、プールに行くんです」
「は?」

凛の何気ない言葉に弾かれたように顔を上げる。プール?明日は土曜日だ。学校の…ってわけじゃねえよな。

「クラスの奴と行くのか?」
「そうですよ、前から誘われてたんですけど明日行くことになって」
「男もいんのか?」
「いますよぉ。あ、宇髄先生妬いてます?」

やだー!宇髄先生に比べたら皆ひよこですよひよこ!と凛は屈託のない笑顔で俺に言う。いや、それは疑ってもないけどよ。凛は毎日のように俺のところに来てくれるし三年後には嫁にするとも伝えてあるからな。だけどそれはそれ。これはこれだ。

「……水着は学校のやつ着んのか?」
「えー!流石に私もピチピチの女子高生ですからね。ちゃんと可愛い水着を買いましたよ!」

あ、写真見ます?と凛がスマホを手にして写真を探し出す。まてまて。俺は学校指定の水着でもお前の水着姿が晒されるのが死ぬほど嫌だったのに、可愛い水着だ?

「ほら、見てください!凄いですよねぇ、この時代ってこんな下着みたいな格好でも水着って認識されてるんですよ。前世だったら暗殺の時しかこんなの着ないですよぉ」

そう言って凛が見せてきたのはビキニタイプのそれはもう本当に可愛らしい水着で。それを着こなしている凛はそれこそ前世でも見たことのなかった胸や足が露わになってる。はいアウト。

「んーよく見えねえなぁ」
「えー?じゃあ拡大でも……あ痛っ!」

立ち上がって凛に近付き、そのまま凛が翳しているスマホをスルーして無防備な白い首にがぶり、と齧り付く。そのままじゅ、と思いきり吸い上げると凛が「んっ」と甘い声を出す。それを聞こえないフリをしてそのまま同じことを三回繰り返して凛から離れると凛の白い首にはくっきりと俺が付けた歯形とキスマークが浮かび上がっていた。

「あ!跡付けました!?」
「付けましたー」
「うわぁ!思ったより派手にやりましたねぇ」
「そんな跡付けてプールに行くのか?」

鏡を取り出して跡を確認し俺がそう尋ねると凛がもう、と呆れたような。だけど嬉しそうに頬を緩める。

「私がプール行くのやでした?」
「ぜってー嫌」
「ふふっ、じゃあ明日は発熱することにします」

可愛らしく笑う凛に俺は思った。

(……キスしてぇーー)

こんなにも良い雰囲気なのにキスの一つも出来ない教師という立場が憎い。生殺しにも程がある。卒業したらすぐに籍を入れて手を出す。もうその日に妊娠させちまっても構わねえ。それを胸に深い溜息をついていると凛があーあ。と少し残念そうな声を上げる。

「なんだよ。もしかしてプール本気で行きたかったのか?」
「え?プールはどうでも良いんですけど、水着無駄になっちゃったなぁって」
「なら、三年後に俺のために着てくれよ。な?」

そう言うと凛は「じゃあ太れませんね」と無邪気に笑うのだった。



おまけの三年後

「天元さん、高校一年の時の水着の話覚えてます?」
「………おぼえてる」
「あ!?忘れてましたね!?」

いや、覚えてる。覚えてるがな。俺はお前の生理明けの今日をそれはもう楽しみに待ってたわけで。だというのに凛のいつもよりも長いシャワーに貧乏ゆすりが止まらないくらい耐えてたんだよ。だから今すぐ抱きたいっていうのに何故か凛はバスタオルでしっかりと体を覆っていて。いやまあ、見えないってのもクるものがあるしその大きさのバスタオルって俺のだよな?と思うと更に興奮することにもなったのだが。

「私も今日見つけるまで忘れてたんですけどぉ…」
「分かった、明日プールに連れて行くから。だからいいだろ、凛?」
「もうっ、こんな水着じゃプールなんていけません!」

そう言って凛がバスタオルを脱ぎ捨てるとそこには凛が高校一年の時にスマホで見せてくれた水着を着た凛の姿が露わになる。だが、一つだけ違うのが。

「おー!育ったもんだなあ!」
「天元さんがしつこいくらい弄るからですよぉ」

高校の時よりも確実に大きくなった凛の胸が水着から溢れそうになっている。元々ピッタリのサイズだったのかもしれないが凛の育った胸はその水着からはみ出しそうで──相変わらず煽ってくれるな本当に。

「勿体無いけどこの水着とはお別れですね…」
「なんでだ?似合ってんのに」
「走ったりしたら胸が溢れちゃいますよぉ、天元さんは良いんですか……ひゃ!」

なかなかベッドに移動してこない凛を抱き上げてそのまま押し倒すようにベッドに倒れ込む。これだけの衝撃なのに確かに片方の胸が水着から溢れそうになる。水着としては落第点だろう。だけど。

「じゃあ、ベッドの上で泳いでくれよ」

俺がそう言うと凛は「あは、おバカさんですね」と可愛らしく笑って俺のお願いを聞いてくれるのだった。






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