闇夜の中、今日も私達は鬼を斬る。


「凛、お疲れ様」
「炭治郎お疲れ様。今日も蒸し暑いね」

季節は夏。
私達は高校の冬に出会い、今は高校も卒業して鬼狩りに専念している。
卒業後は大学に通うか働くかで迷いしのぶさんに相談すれば「うちの組織は万年人不足なので、卒業したら昼夜問わずに働いてくださいね」と笑顔で言われてしまった。
私達が学生業をしている間、この地区ではしのぶさんと不死川さん、そして記憶のある村田さんが今までの鬼の出現率のデータのチェックや、ニュースを隈なく確認して人の感情が揺れ動きそうなものがないかを確認したり、何か必要なものが不足していないかの確認など兎に角忙しくしていたらしい。
そこに訓練や治療、そして鬼を探知しての連絡が加われば三人がどれだけ目まぐるしく動いていてくれていたか聞かなくても分かる。


私と炭治郎と善逸。そして私達に関わってしまい記憶を取り戻してしまった伊之助は鬼狩りを中心の生活を送っていた。
──と、ここまで深刻そうに語ってはみたものの実はそこまで辛い生活は送っておらず、むしろ学生時代よりも睡眠時間も取れるようになりかなり良好だ。そして給料も普通に働くよりも遥かに貰えている。どこからこんな資金が?と疑問に思い尋ねてみると「俺たちのトップにいるのはお館様だぞォ?」と不死川さんに言われて妙に納得してしまった。
お館様は今世では体は患っておらず、全国にある鬼狩りの組織全てを把握して資金を援助しているとのこと。…お館様については考えた方が負けな気がする。前世から本当に底の知れない凄い人だ。

「……凛、やっぱり夏はその服を着て任務に出るのか?」
「え?うん、暑いもん」

鬼狩りの際、夏は半袖のパーカーに短めのハーフパンツを穿いているのだけど炭治郎はこれが毎年お気に召さないらしい。
女の人はそんなに肌を晒したら駄目だ!と前世の頃と変わらずに注意をしてくるのだが暑いものは暑い。

「……足に跡を付けよう」
「駄目!炭治郎本当にいっぱい付けるから長ズボンしか穿けなくなるでしょ!」
「願ったり叶ったりだ!今夜はもう上がりだから…時間はあるよな?」

誘うような低い声で炭治郎が私に問いかける。
私はこの竈門炭治郎の恋人で、もう本当に彼のことが大好きなのだ。
前世の頃から炭治郎に溺れていた自覚はあるけれど、今世でもそれは変わらず。
記憶を取り戻す前から炭治郎のことは好きだった。だけど、炭治郎が思い出さないのなら身を引こうと思っていたのに炭治郎は記憶が無くても私のことを好いて最終的には捨て身で追いかけてきてくれた末に記憶を取り戻したのだ。

まあ、あれからの私達は恋人としてやることはやりましたし、学校では常に一緒にいましたね。いや、善逸と伊之助も一緒にいたけど、炭治郎が凄い。ところ構わずいきなり甘えた空気を出すし、私も満更でもないので断れないしで善逸にどれだけ叱られたはもう思い出せない。

「腹減った!!」
「あーあっつい!ジュースが飲みたい!」
「伊之助、善逸。お疲れ様!」

戻ってきた二人に声をかけて、深夜に飲み食いをしたら太るよーなんて軽口を叩きながら報告のために本部に戻る。それが私達鬼狩りの一連の流れだった。
二人と合流して話を逸らし、よしよし誤魔化せたかなと思う私の頸に炭治郎が後ろからキスをしてきた、

「俺の部屋で待ってる」

小さく囁かれたその声にぞくぞく、と背中に快感が走る。
私達にはそれぞれ本部に休むための部屋が用意されている。いつでも仮眠できるようにとシンプルな部屋なのだが…炭治郎はいつもこうやって色っぽい声で誘ってくるのだ。

「……すけべ」
「凛だけには、な?」


これが私達の日常で、一般の人からしたら特殊な生活をしているけれど何不自由はなく、人々の平和を守れるなら文句はない。
何より大好きな人と隣にいれるだけで私はこんなにも幸せなんだ。


「あ?凛なんでそんな暑苦しいズボン穿いてるんだよ」
「あれでしょ?おっきい虫に吸われたんでしょ?」
「うっさい善逸!!」

翌日から暫く長ズボンで過ごす日々を過ごし、跡が消える頃にまたおっきい虫によってそれを付けられることになったのは言うまでもない。


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