刀鍛冶編 壱


鞘から刀を抜いて確認すると、この刀はもう使いものにならないことが分かった。美琴の血鬼術は強力だったため、刃毀れが酷い。鉄東さんに新しい刀を打ってもらわなければ。と鎹鴉を送れば鉄東さんは修行の際に効き腕を怪我してしまったらしく今は刀が打てないとのこと。
どうしようかな、と悩んでいると丁度炭治郎も刀について悩んでいて、きよちゃん達に「里の方に直接行ってみてはどうですか?」と提案されお館様に申請したところ許可が降りて私達は刀鍛冶の皆さんがいる里へと向かうことになった。

ちなみに里の場所は教えてもらえず、隠の人が背負って連れて行ってくれるらしい。先に私が里へと向かい次に炭治郎が向かうことになり、先に里へと着いた私は長である鉄珍様に挨拶をして、すぐに他の方に刀を作る手配をしてもらった。仕事が早い。


この里は温泉が湧いているらしく、食事の準備をしている間に堪能してきてくださいとまさにいたせり尽せりだ。少しして遅れて到着した炭治郎達と共に温泉へ向かおうとすると、

「あーー!炭治郎君だ!」

とても可愛らしい女の人がなんともまあご立派な胸を揺らしながらこちらへと向かってきた。

彼女はこんなに可愛らしいのに柱なのだという。そして胸が大きい。ふと、自分の胸に視線を落とすとなんともまあ、寂しいものだ。天は二物を与えるし、神様は残酷です。
どうやら甘露寺さんは誰かに挨拶をしたのに無視をされたらしく悲しみに暮れているようだ。え、こんなに可愛らしい甘露寺さんを無視するって何事?
だけど炭治郎が「晩ご飯は松茸ご飯だそうです」というと先ほどとは打って変わって嬉しそうに歌まで歌い出している。可愛すぎませんか?

「あなたは炭治郎君のお友達?」
「あ、はい。斎藤凛といいます。よろしくお願いします甘露寺さん」
「凛ちゃん!そんなにかしこまらないで!私のことは蜜璃って呼んでいいからね!」
「え!?いや流石に柱に向かって呼び捨ては…」
「じゃあ……蜜璃ちゃん?」
「はい!蜜璃ちゃん!」

名前で呼ぶと嬉しいー!と蜜璃ちゃんは抱きついてくる。その、凄い。何がって胸が。しかもなんだか良い匂いがするし…こ、これが恋柱…!
こんなに可愛くて親しみやすくて…胸が大きくて。普通の可愛らしい女の子に見えるのに柱だなんて凄いなあ。
私達は一旦蜜璃ちゃんと別れて温泉へと向かうと温泉はいくつもに分かれていてとても広い。

「禰豆子ちゃん、あっちの温泉に一緒に入ろうか!」
「むむー!」

箱から出てきた禰豆子ちゃんは温泉を前に嬉しそうに目を輝かせている。
流石に私は炭治郎と一緒には入れないので後でね。と言うと炭治郎は禰豆子をよろしく!と嬉しそうに微笑んでくれた。


「禰豆子ちゃん、良い湯だねー」
「むーー!」

温泉は凄く気持ちよくて、幸せな気持ちでいっぱいになる。禰豆子ちゃんは楽しそうに広い温泉で泳ぎだしているし……平和だ。


「久しぶり!元気でやってた!?風柱と名字一緒だね!」

岩場で遮られているけど炭治郎のよく通る声が聞こえてくる。誰か知り合いでもいたのだろうか。

「話しかけんじゃねぇ!!」

あ、怒られた。激しい声と水音がこちらまで聞こえてくる。
凄い音がしたけど炭治郎は大丈夫だろうか。

「炭治郎ー大丈夫ー?」

岩場の向こう側にいる炭治郎に声をかけると「大丈夫だー!」と元気そうな返事が返ってくる。それなら良かった。そう安心していると炭治郎を怒った相手の声がまたしても聞こえてきた。

「お、女!?おま、ふ、ふざけんなよ!!」

バシャバシャとまたしても激しい水音が聞こえる。賑やかだなぁ…どこかで聞いた覚えのある声だけど、誰だったか思い出せない。温泉から出たら炭治郎に聞いてみよう。
私は近くに寄ってきた禰豆子ちゃんと肩を寄せ合って、それからも温泉を満喫したのであった。


「不死川玄弥だよ、温泉にいたのは」
「ああ!炭治郎が腕を折った!」

炭治郎と合流して誰と話していたのか聞けば相手は不死川玄弥だという。そう言われれば確かに彼の声だった。だけど不思議なことに玄弥は私の声が聞こえると顔を真っ赤にして温泉を出て行ってしまったらしい。私は彼に何かしただろうか?えーっと…包帯を渡そうとして、断られた記憶しかないんだけど…?

屋敷へ戻るとご飯が沢山用意されていて、それを炭治郎と私と蜜璃ちゃんと一緒に食べることになった。蜜璃ちゃんはその華奢な体のどこに入っていくのか分からないほどの量を平らげるけれど終始笑顔でご飯を食べる蜜璃ちゃんは見ていてとても癒される。
禰豆子ちゃんもそんな蜜璃ちゃんの優しさに気付いたのかずっと蜜璃ちゃんに甘えていて二人揃って可愛らしい。炭治郎も同じように思っているのかとても優しい目で二人のことを見つめていた。


「甘露寺さんはなぜ鬼殺隊に入ったんですか?」

炭治郎がふと、そんなことを聞く。
さっき蜜璃ちゃんは自分のことを「五人姉弟で仲良し」と言っていた。悲しみが見えなかったということは姉弟はきっと生きているのだろう。
なら確かに、どうして蜜璃ちゃんは鬼殺隊へ?
恥ずかしそうにもじもじしながら蜜璃ちゃんはその理由を口にした。

「添い遂げる殿方を見つけるためなの!」

……へ?

「やっぱり自分よりも強い人がいいでしょ女の子なら!凛ちゃんなら分かるわよね!」
「え?えっと…そ、そうですね?」
「凛!俺、頑張って強くなるからな!」
「はいそうですか!」
「凛ちゃんには炭治郎君がついてるのね!」
「いやあの、その……」

私も守って欲しいわ!と蜜璃ちゃんは本気で恥ずかしそうに口にする。その姿はまさに町娘のようで、刀を握るのなんて似合わないと思ってしまうほど可愛らしかった。


この後、隠に呼ばれた蜜璃ちゃんは私達に頑張りましょうね、と沢山鼓舞をしてくれて「甘露寺蜜璃は竈門兄妹を応援してるよ〜」と優しく言ってくれる。その言葉が炭治郎にとってどれだけ嬉しいことか。
炭治郎も蜜璃ちゃんの言葉に応えるように「もっともっと頑張ります」と言うと蜜璃ちゃんはとても嬉しそうな顔をして炭治郎にヒソヒソ話をした後、私にも「殿方が見つかって良かったわね!」と嬉しそうにヒソヒソ話をしてくる。……ま、まだ、そういうのじゃないのに…!

「じゃあね!」

まるで可愛らしい小嵐のように蜜璃ちゃんは去っていってしまった。もっと話してみたいな。本当に一緒にいて楽しくて可愛らしい人だった。
そんなことを思っていると隣で炭治郎が鼻血を出してしまう。……ヒソヒソ話された時に良い匂いしたもんね?というか豊満な胸が当たってたもんね?

「ふーーーん?」
「こ、これは!凛…むぐっ、」

持っていた手拭いで炭治郎の鼻を拭う。
別に?蜜璃ちゃんは本当に可愛かったし胸だって私と違って大きかったし?そりゃあ鼻血も出ますよね?

「炭治郎の助平」
「お、俺は!誰よりも凛に対して興奮するからな!」
「は!?なんの告白!?」

炭治郎も自分が何を言ってるのか分からなくなり、そのままのぼせたように倒れ込んでしまったので禰豆子ちゃんに背負ってもらって部屋まで移動して布団へと寝かせるのだった。

可愛い柱の蜜璃ちゃん




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