藤の花の家紋の家 壱


藤の家紋の家に着いた私達を、案内してくれたお婆さん…「ひささん」はとてもよくもてなしてくれた。夕飯を用意してくれ、医者も呼んでくれて感謝しかない。ちなみに全員肋が折れていた。猪頭を被った少年は伊之助と名乗り、彼は四本。炭治郎は三本。私と善逸は二本。見事に重傷でかなり痛い。しばらくの間は私達はこの家で療養させてもらうことになった。

「あ、布団が四つ敷いてある」

これは、四人でこの部屋をお使いくださいということだろう。伊之助は一番端っこの布団を陣取ってしまい残った布団は三つ。

「凛も俺達と一緒に寝るってこと!?俺の隣空いてるよぉ!」
「うん、炭治郎の隣で寝ようかな」
「ああ、いいぞ」
「なんで!?」
「いや、必死さが怖い!」

こうして伊之助、善逸、炭治郎、私の並びで眠ることになったのだが、その時善逸が思い出したように口を開いた。

「炭治郎、誰も聞かないから俺が聞くけどさ。鬼を連れてるのはどういうことなんだ?」

善逸の言葉にあ、と。そういえば炭治郎は善逸に妹のことを伝えてなかったことに気付く。

「善逸…わかってて庇ってくれたんだな…」

炭治郎の嬉しそうな声に私まで嬉しくなってしまう。箱の中身が鬼だと分かっていて、善逸は肋が折れてもそれを守り抜いてくれたのだ。炭治郎の大切なものだからと。…善逸はやっぱりとても優しく良い子だ。炭治郎も善逸にいい奴だと伝えると嬉しそうにする善逸は可愛らしかった。

カタカタっ

「ん?」

箱から音が聞こえてくる。
もう日が降りてから大分経っている。炭治郎の妹は鬼にされてしまったと言っていたけれどこの時間なら外に出れるのだろう。

「キャーーーーーー!!まままま守って!!!」

善逸は鬼が出てくることに怯えて部屋を逃げ回る。押し入れを開けて飛び込もうとした時、箱から出てきたのは──

「禰豆子」

滅茶苦茶可愛い女の子だった。


炭治郎がこの子のことを紹介しようとすると、何故か怒り出した善逸は炭治郎を追いかけ回している。肋、痛くないのかな。
そんな二人のことを放っておいて私は炭治郎の妹に歩み寄った。

「こんばんは。私は斎藤凛。あなたは炭治郎の妹さんだよね?」
「む!」

…可愛い。いや、本当に可愛らしい。
人を噛まないためにか口には竹を咥えさせられているけれど、それすら可愛らしいってどういうこと。あまりの可愛さにぎゅ、と抱きしめてみると彼女も私を抱きしめ返してくれる。……可愛い!

「ね、禰豆子!凛と仲良くなったのか……ってうわぁ!」
「羨ましい!!許さん!!」
「ぜ、善逸!なんで怒って……!」
「禰豆子ちゃんって言うんだね。よろしくね」

そう言って頭を撫でると禰豆子ちゃんは嬉しそうに擦り寄って来てくれるので私は可愛くて堪らない禰豆子ちゃんとこの日からどんどん仲良くなるのであった。

可愛い鬼の禰豆子ちゃん




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