大空を仰ぐ

見上げた夜空はいつもより高く感じた。とても「きれい」とは云い辛いような、星がポツポツと輝いている蒼黒い夜空。しんと静まり返っていて、永久にこの時間が続きそうな、そんな気さえした。

「上で見てた頃は遥かに高く感じてた。届かないのは勿論だけど、今じゃもう手の届かない場所にそれはあるんだ」
「届きそうで届かない。あと少しで掴めそうなのにな」

普通に考えて到底有り得ない話しなのに、今の俺達には出来そうで不可能な事だった。

「いつも下の世界ばかり見てたよ。手を伸ばせば柔らかな地面を触れると思った」
「うん」

少なくとも、お前だけは。飛ぶ事を夢見た所で空を飛べる訳がない。そんな器用なのはボーマンダだけ。タツベイの頃から空を飛びたいと願って、立派に成長した末には大空へ羽ばたくんだ。そんな事を願っても、自分にはそうは行かなかった。蝋もまた同じ、だけどそれは例外で、生れつき持った能力だ。翼を持たないような奴がどう足掻いた所で空を飛べる筈がない。輝かない星はただのデカい岩なだけ。

「星ってさ、今から何億年も前に爆発して、その爆発した光が今一瞬だけどこうして光って目に見えてんだって。本当、呆気ないよな」

そう思ってた。のに、彼の考え方はまるで違った。

「そこで終わった訳じゃない。その星がまたそこで輝きを放った時、年月を重ねればいつかまた星は光るだろ?」

心が吸い込まれる、そんな音が聞こえた気がした。
間違ってた、そんなんじゃなくて、気付かされたんだ。
翼なんか無くったって、水と云う小さな空を羽ばたけられれば―。

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