大きさを支配するのは
もし俺を海に例えたなら、彼は風と云った所だろうか。でも俺は海のような広大な広さなんて、強さなんてこれっぽっちも無かった。いつも彼には甘えっぱなしの頼りっぱなし。全く、リーダー失格だよな。
「鷹丸…俺これからやって行けんのかな」
「…は?何云ってんの浅葱らしくないな。当たり前でしょーよ」
「リーダーっていうプレッシャーね。何だか先が思いやられるっていうか」
そう云うと彼は複雑な表情を造った。無理もない事を聞いたけど、これが現実。本来の俺なんだ。
俺だって一応生き物だし、弱点や寿命だって勿論ある訳で。完璧な生物なんて存在しない。もし最強になったとしても人はそこで終わると思う。
成長する、進化するからこそ人は強くなって行く物だとは思ってたけど、やっぱり俺は駄目なのか。そう悩むとむしろ苛々して来た。弱い自分に満足なんて出来ない。
「強さなんて求めた所で、得られる物は絶望だけだと思うけどな」
彼は静けさを装いながらそう答えた。
真剣な事なのに眼を背けてしまう。俺はただ逃避していただけなのかもしれない。
例えそうでなくても、もう逃げてしまいたいぐらいの感情を持っていた。いっその事、殺して欲しい程だ。
「弱い奴なんて要らない…俺は強くなきゃいけないんだ…そうでなきゃ此処に居る意義がない。リーダーなんて勤まる筈がないだろ」
「さっきからリーダーリーダーって…もうちょっと考え直してみろ。人に頼ったって良いだろ」
「…死んだら楽になれるかな」
「……………」
彼は素早く溜め息を吐き出した後、もう知らねぇとでも云い出しそうな目つきで後ろを見た。
けど俺には到底出来なかった。死んだら楽になれる、悩む事も苦しむ事もなく安らかになれるのだろう。でも俺には何か大切な物を忘れている気がして。
「なら死んでみろよ。見ててやるから」
「無理」
「…だろうね」
そう云って、苦笑した。
広大なのはやはり風の方だった。海に波が出来るのは風の影響。風吹くままに海は音をたて、流れ行く。
やっぱり、甘えてしまった。