「ホンットに悪い!」

両手を合わせて彼女の前で頭を下げる回数も、ついに両手では数え切れなくなってしまった。
オフだった日がミーティングに早変わり。
敵情視察に行ったモモカンが緊急に召集をかけたと言うことは、きっと思った以上に強敵だったのか、俺たちが苦手なタイプの野球をするかのどちらかだろう。
仮病でも使おう、何度そう思ったことか。
けれどそんなことはできないわけで、俺は今こうしてただ平謝りを続ける。

「ミーティングだけなんだったら、夜は少し時間あるよね?」
「まぁ…うん」
「一時間でも二時間でもいいよ。孝介と一緒にいられるなら」

そんな嬉しいこと言ってくれる彼女に対して、俺は更に申し訳なくなさで居たたまれなくなる。
深く頭を下げ、せめて誠意だけでも伝わればともう一度「ゴメンな」と言うと、彼女は苦笑を浮かべた。

「孝介、もう約束はナシにしよっか」
「え?」
「約束は、しないでおこう」

頭を下げる俺を覗き込んだ彼女は、「大事な時期だもん、仕方ないよね」と言う。
いつ来るか、と戦々恐々としていたその時がついに、来た。
けれどそれを拒否する権利なんて、俺にはないことくらい分かっている。
我慢ばかりさせて、自分のしたいことばかりしている俺についに来るべき時が来たのだろう。
深呼吸をして恐る恐る見上げる彼女の顔は、予想に反しての笑顔で面食らった。
清々しさすら感じる表情は、まるで自由を得ることに喜びを感じているようだ。
後頭部をガツンと殴られたような感覚に、衝撃は隠しきれない。
俺の様子がおかしいことに気付いた彼女は、「もしかして、勘違いしてる?」なんて言いながらクスクスと笑った。

「勘違いって、それ、俺と別れたいってことだよな」
「やっぱり勘違いしてる。違うよ、そう言う意味じゃない」
「じゃぁ他に、どんな意味があんだよ」
「だって約束しちゃうとダメになる度に孝介は謝っちゃうでしょ?」
「そりゃ、まぁ…」
「だからね、約束じゃなくてできたらいいねって期待にしよう」


ゆびきりげんまん


こんなに俺を喜ばせてくれる君に、一体何が返せるだろう。
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