「七夕なのにぃ」
「見事に曇ってんなー」
「何もこんな梅雨の季節にしなくてもいいじゃんね」
「梅雨の季節だから価値があんじゃねーの?」
「どうして?」
「晴れる日の方が少ないからだろ。晴れるかどうか分かんねぇから気に留めるもんなんだよ」

あぁ、なるほど。
慎吾の答えに素直に納得をする。
窓の冊子に腕を預けながら空を見上げると、慎吾の部屋の窓から覗く曇り空には星ひとつ輝いてはいなかった。

「どのみち晴れたって、ここからじゃ天の川は見えないしな」
「そうだけど。そこはほら、気持ちの問題ってやつでしょ」
「まぁ本人たちは曇っててほしかったと思うぞ?」
「何で?曇ってちゃ会えないんだよ?」
「雲の上はいつも晴れてんだろ」

再び、なるほどと納得をすると慎吾は、「バカだねぇ、お前は」と私の頭にデコピンをひとつ。
だけどそんな現実的なことを言ってしまえば、価値云々の話は一体どうなると言うのか。
そう思いながら反論をしないのはきっと、何を言っても慎吾は私を納得させる術をいくらでも持っていて、最後は必ず私が負けてしまうからだ。
それは友達として、恋人として、それなりの時間を共有してきたからこそ分かること。
いくら眺めたところで変わり映えのない空模様にため息を漏らし、「今年は残念だったね」と、届くはずもないふたりに告げた。

「案外喜んでるかもよ」
「そうかなぁ」
「俺だったら恋人との貴重な時間、誰かに覗かれてるなんごめんだからな」

同じように空を見上げていた慎吾が、私の額にに小さなキスを落とす。

「他人の恋路覗くような野暮なことは諦めて、そろそろこっち向いくれませんかねぇ」

じゃないと拗ねるぞー、と慎吾が笑うので、「もー、仕方ないなぁ」なんて言いながら広げられた両腕の中に飛び込むのだ。


リトルリトルスター


織姫さま彦星さま。
この曇り空の上で、どうか心ゆくまで貴重な逢瀬を楽しんでください。
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