「お前なぁ…休み時間ごとに来やがって、どんだけ暇人なんだよ」
「だって阿部に会いたいんだもん。仕方ないじゃん」

呆れながら眉間にシワを寄せる阿部と、ニコニコ可愛らしく笑う女の子。
毎日どころか休み時間ごとに繰り返されるこの会話に花井も俺も随分と慣れてしまい、今では“俺たちは関係ないですよ”と空気を纏い傍観することが当たり前になっている。
あ、ちなみに俺は水谷です。
よろしくね。

「ストーカーか、お前は」
「別に阿部のもの取ったり、付け回したりとかはしてないじゃん!」
「仕方なしに貸してやったタオル、しらばっくれてパクろうとしたのは誰だ?」
「ちゃんと返したでしょ…渋々だけど」
「マジで渋々な」

ここだけを見ていれば、完全にあの子の片思い。
だけど俺は知っているんだ。
あの子がなかなか来ない休み時間には、珍しく落ち着きのない阿部が見られることを。
部活でさえ、見に来ているかチラリチラリと確認していることも知っている。
感情に素直な面では似た者同士のふたりでも、どうやら素直になれるところが面白いほど真逆らしい。
それは綺麗な平行線を描いて、まるで交わることを恐れているかのように。

「ねぇ、花井くん。阿部ってひどいよね」
「え?ああ、うん。阿部はヒドイやつだよ」
「花井テメー…!」
「流石キャプテン、分かってくれてる!」

花井を巻き込んで楽しそうに笑うあの子は、分かっちゃいない。
ほら、どんどん阿部の顔が険しくなっている。
これで俺に八つ当たりが落ちるのだから、こんなトバッチリはないと思う。
何にも言ってないのに、ただ微笑ましく見守ってるだけなのに、クソレ呼ばわりされる俺の虚しさは一体どこへ持っていけと言うのだろうか。
そもそも阿部が、さっさと言わないのが悪いのだ。
あの子の分かりやすいアピールに乗っかれば、それで全てが丸く収まるじゃないか。
ヤイヤイと言い合うふたりと勘弁してくれと言いたげな花井を眺めつつ、俺は静かに「はい」と手を挙げてみる。

「阿部は素直に会いに来てくれて嬉しいことと、彼女になってほしいことを伝えればいいと思う」


平行線の終わり


ふたりに感謝される予定だった俺は、阿部の渾身の蹴りと照れた彼女の張り手で見事に机にダイブした。
そして花井は呆れ顔。

何でだよ!
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