ただひたすら、涙は私の頬を濡らす。
どうしようもなく溢れる涙は、私の心にある虚無感と比例しているようだった。
悲しい恋の終わり。
背伸びばかりして、本当の自分を隠して、理想とする女の子を演じ続けた半年間はついさっき、終わりを告げたのだ。
思い返せばいつも無理ばかりで、辛くて苦しい半年だった。
だけど思い浮かぶのは彼の隣にいられただけで胸が弾んだ半年で、心と頭は正反対に私の中でひしめき合っている。
幸せだったと思えるのに、どうして涙が止まらないのだろう。
小さく蹲って泣いている私に田島は何も言わず、ただ隣にいた。
どこか遠くを眺める少しだけ大人びた表情は、今の私にはあまりにも眩しい。
そもそも田島がここにいることがおかしな話だけれど、問いかけることをしないのはとにかくひとりにはなりたくなかった私のわがままだ。

「悲しい?」
「悲しいよ」
「辛い?」
「辛いよ」
「忘れたい?」
「…忘れたくない」
「うん、忘れなくていーよ」

そんな必要はないのだと言う田島に、私はどうして?と表情で問いかける。
すると田島はいつもの笑顔で、「忘れることは、今までの気持ち否定してんのと一緒じゃん」と真っ直ぐに私を見た。
その言葉にまた大粒の涙が溢れて、今度はわんわんと声を上げて泣く。

大好きだったの。
死んじゃうかもしれないって思うくらい、ドキドキしたの。
頑張ったの。
だけど嫌われるのが恐かったの。
何をするにも無理をしてたの。
息が詰まりそうになったの。
それでも大好きだったの。
離れたくなかったの。
ずっと傍にいたかったの。

背中をさする田島の手は、私の素直な気持ち吐き出す手伝いをする。
嗚咽混じりのしなびた声はとうとう出なくなり、田島はそっと私の手を握った。

「お前は今日、一生分悲しんだから、だから次の恋はうんざりするほどの幸せが待ってるぞ!」

胸を張って笑って前を向け、そう言った田島に私はまた泣いてしまうのだ。
こんなにも真っ直ぐな言葉を、私は聞いたことがない。
こんなにも迷いのない笑顔を、私は見たことがない。

「笑えって言ってんのに何で泣くかなぁ」
「田島が泣かせたんじゃん!」
「えっ!俺!?」

頭をかきながら「マジかよー」なんて呟いて、田島が立ち上がった。
ひどくみっともなくなっている顔を隠しながら、田島の行動を視線で追うとしばらくの沈黙が少し重たく圧し掛かる。
田島って、本当は誰よりも大人なのかもしれない。

「泣けるだけ泣いて、また笑える日が来た時にさ」
「うん」
「もし新しい恋がしたくなったり、誰かにうんと幸せにしてほしくなったりしたら」
「うん」
「迷わず俺のところに来てよ」
「…え?」
「背伸びなんてしなくていいし無理なんてさせない。寂しい思いもさせないし、お前のほしい言葉は何だって言ってやる!何回だって言ってやる!だから次の恋は、俺と一緒に始めたらいーよ!」


太陽の申し子


君の笑顔の全てを、幸せで埋め尽くしてあげたいんだ。
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