「はじめちゃんは厄介事に好かれる人なんだろうね」 「嬉しくねぇよ」 何で俺の周りはこんなやつしかいないんだ、とげんなりとした表情ではじめちゃんが言うので、恐らく間違ってはいない誰もが正解だと思うであろう答えを言ったのに、どうにもお気に召さなかったらしい。 「私は及川とは違うよ?」 「どこがだよ」 「だって私は、はじめちゃんに構ってほしくてわざとちょっかいかけてるんだもん」 ニッコリと、頬杖をついて笑ってみせる。 更にげんなりと顔を歪ませたはじめちゃんは何も言いはしなかったけれど、勘弁しろよと表情が物語っていた。 でも、勘弁なんてしてあげない。 何もしなくても構ってもらえるほど、私はあいつほど恵まれたものは持っていないのだから。 だから少しだけ、ほんの少しだけ、ズルをすることを許してほしい。 及川が持っていなくて私が持っていて、唯一はじめちゃんが私を優先してくれるものを使うことを。 「はじめちゃん。これからもずっと、はじめちゃんのものでいさせてね」 最終奥義の呪文を唱えれば、はじめちゃんはいつだってそっぽを向いてしまう。 耳まで真っ赤にして、狼狽えながら。 はじめちゃんは何も言ってはくれないけれど、それでも私には十分だった。 それは照れ屋なはじめちゃんの物言わぬ肯定で、はじめちゃんもまた、私に預けてくれているのだ。 そして今日もまた、私の一部がはじめちゃんのものになり、はじめちゃんの一部が私のものになり、そしていつかひとつになってしまえばいい。 そんなことを言えば今度こそ、「勘弁しろよ」と言われてしまいそうだけれど。 (130809) |