「お祭りって、独特の雰囲気あるよな」 「そうか?」 「空気感っていうか、匂い?やっぱり特別な感じせぇへん?」 「そら年に1回のことなんやから、特別は特別やろ」 「そういう現実的なこと言うてるんちゃうやけど」 賑わいを見せる本通りから1本路地に入れば、少し先のお祭り騒ぎが嘘のような静けさが漂う。 屋台で買った焼きそばを啜りながらそう言った烈の言い分は、まったくもって可愛げの欠片もなくて、「相変わらず夢のない男やな」と言えば「うるさいわ」と言葉が返った。 「何だかんだと、変わらん光景やね」 「まぁな」 少しだけ高くなっている塀に腰を降ろし、さっき買ったばかりのかき氷を頬張る。 汗がにじみ出る気温の中、口の中がひんやりと温度を下げて行くのを感じながら、地面に付かない足をぶらぶらと揺らした。 「お祭り一緒に来るようになったんって、小学生からやっけ?」 「幼稚園児の頃からや、アホ」 「え、そうやった?」 「そうや」 「そっか、そうなんや。思った以上に深い歴史やってんな」 「別に来年も変わらんやろ。何やかんや言うて、結局お前と来てる気ぃするわ」 今更他のやつと来るんもメンドイし、とすっかり食べきった焼きそばに両手を合わせてごちそうさまをする姿を横目に、思わず烈のTシャツを掴む。 何やねん、なんて訝しい表情のはずが、何事だろうか。 思いがけず輝く視界の中心には烈がいて、食べかけのかき氷もそっちのけに烈の顔に掌を伸ばした。 「…何か今、世界がバラ色に見えてるんやけど」 「今すぐ病院行って来いや」 言葉とは裏腹に穏やかな笑みを浮かべる烈の横顔に、そう言えば去年も同じようなことを言っていたなと思い出す。 つまりは、そういうことらしい。 どうやら来年も、結局同じことを話しながら次の年の話をしているに違いない。 (130807) |