※匂わす程度のアダルトな表現があります ひとつのベッドで、ふたりで眠る。 お昼に干した薄手の掛布団にくるまりながら、太陽の匂いの中で瞼を落として隣り合う温もりに手繰り寄せられる心地良さを、私はもう知ってしまっていた。 「リハビリ、順調みたいだね」 「まぁこうなる前ほど言うことは聞いちゃくれねぇけどな」 「行っちゃうのね」 「…悪い、もう知ってたのか」 「うん、何となく。そのためにジャンが必死にリハビリしてたのも知ってるもの」 そっか、と零す薄っすらと煙草の匂いが残ったままのジャンの胸元に鼻を摺り寄せ、肺いっぱいの彼の香りを吸い込み私の身体へと迎え入れると、しっかり鍛えられた両腕が私を抱きかかえてすっぽりと覆ってしまった。 どこまでが自分の体温でどこからが彼の体温かも分からなくなり、境目が曖昧になるほど織り交じるお互いの肌の感覚を確かめ合う。 この時ばかりは、太陽の匂いよりも重なり合う熱の匂いが勝るのだ。 知ってしまった愛しい温もりを、恨めしく思ったのはこれが初めてだった。 浮かれる熱の中、確かに感じるジャンの鼓動の速さに思わず零れた涙はどうか、快楽の形だと受け流してほしい。 目尻に溢れるそれを、ジャンの唇が掬い上げる。 あとは抗いようのない愛するが故の行為に、意識が移ろい溶けていった。 見た目よりもずっと柔らかい金色の髪に指先を伸ばし、何度も何度も感触を確かめるように梳いては撫でる。 今、この瞬間の何ひとつも忘れないように、私の身体のあちこちに刻み付けるように、止め処ない感情の流れをぶつけるように何度も、何度も。 そしてその手に重なる無骨な手が、もう一度私を抱き寄せ火照ったままの身体がぴたりとくっ付けば、耳元に落とされる唇にピクリと肩を弾ませた。 「このまま攫ってく。いいか?」 尋ねながらも否定的な返事を受け付けないとばかりの声色は、確固たる覚悟と意志を宿して私へと響いた。 ゆっくりと上体を起こし、離れてゆくジャンの瞳に歪んだ私の表情がゆらりと映り込む。 今度は私が両手を広げ、求めるようにジャンへ差し出せば掛布団がするりとふたりの間をすり抜けた。 「セントラルにも、リネンの布団はあるかしら」 (130905) |