お隣(って言っていいかどうか躊躇うほど距離はあるけれど)の陣内家はお盆の時期になると毎年賑わう。 この田舎が騒がしくなることが小さい頃から嬉しくて、年を重ねる毎にこの時期が待ち遠しくて仕方なった。 理一さんに会える、数少ない機会だから。 「随分迷惑かけちゃったな」 「陣内家に直撃してたら、ウチだって屋根が吹き飛ぶくらいじゃ済まなかったよ」 「とにかく怪我がなくて良かったよ。安心した」 栄おばあちゃんのお祝いのようなお別れ式が終わり、陽が落ちた頃に理一さんが訪ねて来た。 あの大騒動に加え、みんなが慕っていた栄おばあちゃんの不幸が重なったとなれば、今年は話をするのも難しいだろうと思っていたのに。 「気が抜けたからか、流石に疲れが出て来たなぁ」 「本当にお疲れさま。お茶入れて来るね」 「あぁ、いいよ。ここにいてくれ」 縁側から立ち上がろうとすると、理一さんが私の手首を強く握る。 頼むから、と懇願されてしまったなら私がここを離れる理由はなくなってしまった。 大人しく理一さんの隣りに腰を降ろし、湿り気の強い風が吹き抜ける庭先で2人沈黙に包まれれば、突然肩に重みが伝わる。 初めて寄りかかられる身体に、驚きを見せないようにそっと背中を撫でた。 何度も、何度も。 すると理一さんの頭が肩からずるずると胸元へ落ち、「参ったな」と震える声が漏らされた。 「理一さん、泣いて」 「甘やかされる日が来るなんて思わなかったよ」 いつの間にかこんなに大人になってたんだなぁ、とかき抱くように腕が回される。 幼い頃から知っているはずの温もりなのに、今までのどの思い出とも重なりはしなかった。 (130822) |