「初めてブン太に会った印象って、ガム膨らませるのが上手な人って感じだったんだよね」 「は?マジ?普通は丸井くん超イケメン、とか丸井くん超カッコイー、だろぃ」 「あ、それはなかったわ」 「よーし、真田にどつかれろ」 「死ねと!?」 私、あんたの彼女ですけど!という訴えにブン太は「あーはいはい」と適当にあしらう。 「じゃぁ聞くけど、ブン太だって最初から私のこと可愛いとか優しいとか思わなかったでしょ?」 「あ、それは今でも思ってねーけど」 「あぁそう、幸村に睨まれろ」 「死ねってか!?」 俺、お前の彼氏ですけど!という訴えに、私もまた「あーはいはい」と適当に流した。 「お前マジ可愛げなさすぎ」 「ブン太ってほんとデリカシーないよね」 気に食わないとばかりに唇を尖らせる。 フン、とお互いそっぽを向くけれど、「「でも、」」と重なった声に顔を見合わせ、2人同時に吹き出した。 「運命的な出会いでもなかったのに、いつの間にこうなってたのかな私たち」 「さーな。何事も積み重ねが大事ってことじゃね?」 「ブン太のくせにいいこと言わないでよ」 「俺はイイコトしか言わねぇっての」 「テニスで証明されてる分、ツッコミづらいんだけど」 「バーカ。そこはお前で証明されてる、の間違いだろぃ」 ブン太の膨らませるガムがパチンと弾ける。 それが、私とブン太のキスの合図。 積み重ねが生んだ、2人だけの秘密。 (130822) |