人間がどれだけ勝手で、どれだけ愚かで、どれだけ浅はかな存在かなんて、お嬢に拾われる前から知り尽くしていることだった。 そもそもそんな人間がいるからこそ俺が生まれたと言っても過言ではないのだから、人間の身勝手を見続けるのもまた因果なのだろう。 それでも何故か人間に興味が尽きないのは、稀に今まで見続けてきた人間とは毛色の違う存在に巡り合うからだろうか。 理の外れにいるような俺たちに、巡り合わせがあるかなんてことは知らないけれど。 「あんたも大概変な女だな。俺たちの正体を知ったら、普通は避けるもんだろ?」 「そりゃぁ最初は地獄通信されたのかと思ってビビりはしたけど、偶然知っちゃったからってあなたたちが私をどうこうしようなんてことはなかったし」 「何故俺を恐がらない?」 「今言ったとおり、何もされてないのに恐がる理由が見当たらないよ」 「人間ってのは自分と違うものは恐がり嫌い排他したがる生き物だろ?」 「それがあなたが見続けてきた人間の印象?」 「ああ、そうだ」 だからと言って、それがおかしいことだとは思わない。 人間という生き物がそういうものだということも良く知っているし、自分を守るために異質なものから遠ざかろうとするのは生きる上での本能だということもまた、理解しているからだ。 それが当たり前、それが当然。 なのにどうしてこうも積極的に関わろうとしてくるのだろうか。 何故俺もまた、彼女の言葉に応えているのだろうか。 「そうだなぁひとつ理由を挙げるなら、あの大きなあなたの瞳がとても綺麗だったから、かな」 「…やっぱりあんた、変な女だぜ」 辿るのも気が遠くなるほど長く、人間を見続けてきた。 それも恨み、妬み、嫉み、怒り、悲しみ、そんな後ろ暗いものがほとんどだ。 それでもこうして、稀に今まで見続けてきた人間とは毛色の違う存在に巡り合う。 だからだろうか。 どうしたって、人間を嫌いになれないのは。 (130822) |